日本人上司がWHYを嫌がり
HOWを好むワケ

 日本人の上司は「なぜ?」(Why?)の質問をされることに抵抗感を持つ人が多い。部下から対等にチャレンジされているようで、感情的に反応してしまうのだろう。

 逆に、「どうやって?」(How?)という質問は好ましく感じる。「先輩である自分が、方法やプロセスを後輩に具体的に教えてやる」という図式になるからだ。相手からの「学ばせてください。お願いします!」といった雰囲気も感じるなら、日本の謙遜の文化に基づくノンバーバルなコミュニケーションも成立する。

 しかし、アメリカ人は、すぐに「なぜ?」と聞くのが習性である。小学校に上がる前から、「なぜ?」と質問し、他人と意見を論理的に交わすのが良いことだと教育されてきた。事の是非を合理的・論理的に判断する西欧文化でよくある傾向だ。

 特にアメリカは多様な文化や宗教、価値観を持つ人々が共生している国。実際、他人の行動や考えで理解できない点は直接聞くのが一番、というシーンは多い。日本でよくある「察する」は通用せず、徒労に終わりがちだ。

 そして、アメリカ人は理由が分かれば素直に納得する。「腑に落ちる」感覚が大好きなようだ。

 こうした傾向は、相手が仕事の上司であっても変わらない。というか、相手が上司であれば、いっそう張り切って質問したり意見したりする。トムが日本人駐在員の遅番シフトまで山田さんに提案するのも、どんな機会でもとらえて上司に自分の積極性や能力をアピールしよう、というアメリカ人にとってはごく普通の行動なのだ。

 それでは、アメリカに部門長として赴任してきたばかりの山田は、トムに何と返答すれば良かったのだろうか?