物流大戦#4Photo by Yasuo Katatae

2024年問題を契機に、中小物流会社の事業譲渡ニーズが高まっている。それを千載一遇のチャンスと見ているのが、日本M&AセンターやM&Aキャピタルパートナーズ、ストライクといった、中小企業のM&Aを仲介する事業者たちだ。特集『物流大戦』の#4では、一山当てようと物流業界に群がるM&A仲介会社の思惑と、中小の会社の受け皿となって事業拡大を目指す物流会社の野心に迫る。(ダイヤモンド編集部副編集長 片田江康男)

M&A仲介業者が物流業界に殺到
飛び交う物流会社「売却リスト」

「今、バイネーム(個社名入り)の概要書付きで、100社以上の案件が来ている。おそらく日本でトップクラスの情報量だろう」

 こう話すのは、奈良県に本社を構える中堅物流会社フジトランスポートでM&Aを担当する川上泰生執行役員だ。同社はM&A仲介会社など75社と、常時やりとりしているという。

 福岡県を地盤に、企業の物流業務を一括受託する3PL(サードパーティー・ロジスティクス)事業に強みを持つシーエルも、状況は似ている。

「日本M&Aセンター、ストライク……、上場しているほぼ全てのM&A仲介会社からご連絡いただいているが、私のフルネームを言える方か、直接お会いしたことがある方からのご連絡のみ対応している。全てに応じていたら、仕事にならない」

 シーエルの二宮慎吾代表取締役は、そう言って苦笑いする。

 M&A仲介会社は、会社を売却する側と買収する側の間に立ち、買収価格などの条件交渉やさまざまな法的手続きを担う。日本の事業承継ニーズを追い風に、M&A仲介市場は近年、急拡大を続ける。

 中小企業庁のM&A支援機関登録制度のデータベースによれば、M&A仲介を手掛ける法人は1800を超える。その中でも、最大手として人材とノウハウ、売上高で他社を圧倒しているのが、日本M&Aセンターだ。

 そんなM&A仲介会社が今、大挙して物流業界に押し寄せ、壮絶な営業攻勢を仕掛けている。

 物流業界でM&Aが盛り上がる理由は何か。また、どんなM&A仲介会社が物流会社側に求められているのか。次ページで最新の業界動向を詳しく解説する。