子どもを持つ可能性のある人は
育休終了まで加入は待って!

 こうした負担減と給付減を比較して、より有利な方を検討したくなるでしょう。

 しかし、何歳まで生きるか、失業することはあるのか、企業型DCがどれくらいの運用益が出るのか……といった将来のことは分かりません。厳密に「お得な方」を選択することは難しいでしょう。

 よって、大まかな負担減と給付減を確認しつつ、それぞれのライフプランに合わせて対応するのが現実的です。

 たとえば、近い将来、子どもを持つ可能性のある人は、少なくとも育児休業を終えるまで、選択型は選ばない方が良いでしょう。

 上の例(月収40万円で2万円拠出)で、出産手当金が約6.5万円減、育児休業給付金が1人あたり約18万円減(2人分取得で約36万円)、最大で42.5万円の減額が見込まれるからです。

 一方の税・社会保険料負担減は1年間で約8万円 。給付減の方が大きくなるケースが多いでしょう。

 また、所得が高い人は、選択型を選んだ方が有利になるケースもあります。

 社会保険料には上限があり、賞与などにもよりますが、年収1000万円程度を超えると保険料は一定となります。よって、給与が多少下がっても保険料が上限を超える(標準報酬月額の等級が下がらない)場合は、税負担減の恩恵だけを受けることができます。

 企業の人事や総務担当の方は、企業型DCを選択した従業員がこのようなメリット・デメリットを正しく認識しているかどうか、申請を受け付ける際に確認してあげると親切です。分かっているつもりでも、いざ給付があるときに「思ったより少なかった」ということもあるでしょう。

 厚生労働省は、通知で「社会保険、雇用保険等の給付額にも影響する可能性も含めて、事業主は従業員に正確な説明を行う必要があること」と定めていますが、はたして実際に実行できているのでしょうか。

 2024年12月からDCと、企業年金制度の一種であらかじめ給付額が決まっている確定給付企業年金(DB) を併用している場合のDCの拠出限度額が見直されます。選択制DCの掛け金見直しが必要になる可能性もあります。経過措置もあるのですぐに影響するわけではありませんが、選択制DCは慎重に選びたいところです。

(協力/ファイナンシャルライター 瀧 健)