10浪以上の経験者は
2パターンに分けられる

 さて実のところ、私は「学歴コンプレックスを払拭(ふっしょく)したい」という動機で受験勉強に打ち込んでいました。ですが浪人年数が2桁を超えてくると、そうしたタイプはあまりいません。人生における目標達成や、将来の夢を叶えるためなど、もっと大きなものに向けて努力している人が多い印象です。

 具体的には、私がお会いした「10浪以上」の経験者の多くは医学部志望でした。目標が高いため、なかなか合格できずに苦労しながらも、あきらめずに毎年受験をしていたのです。

 中には他大卒業後に医学部に入り直そうとしたり、社会人生活を送りながら勉強を重ねたりする人もいます。 その結果、コツコツ努力を重ねて夢を叶え、苦労の末に医師になる人も多くいらっしゃいます。

 そもそも医学部に入るハードルが高いことから、医師の世界は他業界よりも多浪経験者が多い傾向があります。そのため浪人の年数が多くても、大学や業界内で「浮いてしまう」心配もあまりないようです。

 実際、予備校の医学部コースや医学部専門予備校では、多浪生が大勢通っている環境も珍しくありません。開業医の家庭では、私の友人・知人に加えて、兄・姉も医学部進学のために多浪している事例を見たこともあります。

 ただしその一方で、「多浪してもおかしくない」環境が災いして、中には遊んでしまう人もいるようです。

 私の知人にも、10浪で私立大学の医学部に進んだ方がいます。彼は資金が豊富な開業医の息子さんで、予備校の授業料の心配をしなくてもいい状況にあったために、「受験に使う科目を毎年1科目ずつ潰せばいい」と考えていました。

 その結果、なかなか基礎が身につかず、受験しても好成績が見込めないため、6浪目くらいまではセンター試験(現:共通テスト)の受験を回避していたそうです。

「家が医者で、浪人しても家庭にお金があるから大丈夫」。「何浪しても医学部に行けばリターンがある」。こうした考えが悪いわけではありませんが、せっかく進学校を出たのに、多浪前提で浪人生活をスタートさせている人がいるのも確かです。 

 このように、「大型浪人」は「職人気質の人」と「マイペースすぎる人」の2パターンに分かれることが多いです。