「友達じゃないんだよ!」と
お客さんに叱られたスタッフ

 さて、アイドル時代とは打って変わり、焼肉IWAで失敗続きだったのは、このコラムやテレビ番組でお話してきた通りです。ですが実は、経営や資金繰りなどの「大きな失敗」だけでなく、日々の接客などで「小さな失敗」もたくさん重ねてきました。

「ミスが命取りの芸能界」にいた元AKB48内田眞由美が、焼肉店開業後は「しくじりOK」と部下に説く理由Photo by M.I.

 例えば接客現場では、オーナーである私が、あろうことかお客さんの服にスープをかけてしまったことがあります。新メニューの開発でも、私が個人的に好きな「黒ゴマ担々麵」を商品化して意気揚々と提供したところ、お客さんの歯がゴマだらけで「お歯黒」のようになり、泣く泣くメニューから外したこともあります。挙げればキリがありません。

 自分だけのミスならリカバリーも可能なのですが、難しいのは一緒に働くスタッフの失敗です。

 以前、元アイドルのスタッフが、自身のファンと接するような「軽いノリ」でお客さんにタメ口を使ってしまい、「友達じゃないんだよ!」と注意されたことがありました。そのスタッフはしばらく落ち込んでいました。お客さんの指摘はもっともで、言い訳のしようもありません。

 一方で、焼肉IWAには、店員たちとのカジュアルなコミュニケーションを楽しむお客さんもいらっしゃいます。言い換えると、気さくに接することを逆に喜んでくれる方もいるのです。そのため、どう振る舞うかの線引きは難しいところだと頭を抱えました。

 そのときには「タメ口禁止」などの厳格なルールを作ることも考えたのですが、やはりそれでは焼肉IWAらしくないし、働いてくれるスタッフの持ち味も発揮できないだろうなと感じました。

 そして結果的に、ルールは設けずに自分で考えて行動してもらうようにしました。今も焼肉IWAには、接客のルールやマニュアルはありません。もちろん客商売において必要最低限のマナーやルールは伝えますが、それさえ守ってくれれば、接客方法は各自に任せています。