文章を書くことを仕事にしたことで、大企業の社長や起業家、科学者など、いわゆる社会的に成功した方々にたくさん取材する機会を得てきました。その数は、3000人を超えています。誰もが知る有名な会社の社長も少なくなく、「こんな機会はない」と本来のインタビュー項目になかったこともよく聞かせてもらいました。インタビューで会話が少しこなれてきているところで、こんな質問を投げかけるのです。
「どうして、この会社に入られたのですか?」
数千人、数万人、中には数十万人の従業員を持つ会社の経営者、あるいは企業を渡り歩いて社長になった人となれば、仕事キャリアに成功した人、と言って過言ではないと思います。仕事選び、会社選びに成功した人、とも言えるでしょう。ところが、そんな人たちの「仕事選び、会社選び」は、なんともびっくりするものだったのです。
本記事は、『彼らが成功する前に大切にしていたこと 幸運を引き寄せる働き方』上阪 徹(ダイヤモンド社)より、抜粋してご紹介いたします。

秋元康さんはどうやって「ヒットのタネ」を見つけているのか?Photo: Adobe Stock

「みんなと同じことをしていたら負けてしまう」

 人があまり行かないところに行く。これは、爆発的な成功の重要なヒントの一つかもしれません。この人も、もし就職するとすれば、あえてみんなと逆に行く、と語っていました。作詞家であり、AKB48や乃木坂46をはじめとした大ヒットグループを生み出した秋元康さんです。

 音楽、テレビ、映画などで次々にヒットを世の中に送り出してきました。高校時代から放送作家として活躍してきた秋元さん。その「売れる」秘訣を聞きました。

 秋元さんとて、自由業で、小さな一個人。だから、みんなと同じことをしていたら負けてしまう、と語っていました。みんなが集まっている野原には、野イチゴはない。だから、野イチゴがたくさんありそうな未開の場所を探すのだ、と。

 流行に関わる仕事をしてきて感じていることがあったそうです。それは、今はやっているものは、1年前に植えられていたということ。例えば今、ヒマワリが高値で取引されているとして、ヒマワリを今から植えたらみんなと同じです。待っているのは、暴落しかない。必要なのは今、タンポポを植える勇気だというのです。

 そしてもう一つ、秋元さんには好きな言葉がありました。
「止まっている時計は日に2度合う」

 例えば、ずっと前から延々とカスミ草だけを植えている人がいるとする。自分の姿勢を決して曲げない。カスミ草は今はヒットしていない。でも、何年かに一度、カスミ草の大ブームがやってきて、この人は高い評価を受けるのです。

 一方、ただ流されて、ヒマワリだ、タンポポだと移ろう人もいる。みんなが行こうとするところ、そのときに流行しているものを追いかける人のことです。こういう人は、永遠に時代から5分遅れで走り続けることになります。一度も時間は合わない。

 秋元さんはこう言っていました。もし今、就職先を選ぶとすれば、あえて最悪のところを狙うだろう、と。みんなと逆へ逆へと行く。それが自分のやり方なのだ、と。

 ボロボロの状況にあるときこそ、チャンスのシグナルなのだということです。蛇がいたり、滝があったりもする。しかし、みんなが危ないという場所にこそ、野イチゴはたくさんあるのです。そもそも正解なんて、どこにもないと秋元さんは言っていました。でも、正解だと言う人に、人はついていくのだ、と。はっきり「こうだ」という思いを持っている人に近づこうとする。そして、そういう人のところに、仕事は集まる。

 秋元さんは成功を手にした人にたくさん出会ってきました。では、この人たちは何が違うのかというと、簡単だと言っていました。「行動を起こしている」ということです。まさにこれは、行動こそが偶然を起こすから、なのかもしれません。

 問題は、やるかやらないか、なのです。ここが運命の分かれ道。しかし、実行に移す人は案外少ないのだ、と語っていました。

 みんなと逆を行く勇気を持てるか。いつか合う時計を待てるか。ユニクロしかり、ニトリしかり、ソフトバンクしかり、30年前はほとんど誰も知らない会社だったのです。それを選べた人が、大きな果実を手にしたのは事実なのです。

※本記事は『彼らが成功する前に大切にしていたこと 幸運を引き寄せる働き方』上阪 徹(ダイヤモンド社)より、抜粋して構成したものです。