天才には敵わないが、
超二流を目指す道

――我われのような普通の人間、いわば二流の人間でも、がんばり次第では、一流の人たちと伍していけるということでしょうか。

 そうですね。僕も二流ですが、努力すれば、一流にはなれないとしても、「超二流」にはなれるかもしれない。そういう思いでこれまで準備をしてきましたし、いまも超二流を目指して努力しています。

 実際、天才、一流の人というのは別格なんです。僕が「しゃべりの世界」で一流だと思っているのは、松本人志さんです。

 彼がすごいなと思ったのは、数年前のことです。彼のバラエティー番組に呼ばれて、芸人魂みたいな話になった時に、僕が「ドーランの下に涙の薄化粧と昔から言って……」とか、「悲しみが笑いと表裏一体になって……」みたいなことをロングセンテンスでベラベラしゃべったんです。松本さんは黙ってそれを聞いてくれていたんですが、僕がしゃべり終えるやいなや、ひと言、「古舘さん、たとえ古っ!」て言われたんです。それで終了。彼が全部、笑いでその場をかっさらっていきました。

「うわーっ、俺、時代遅れだな」と思った瞬間ですよね。紡ぎ出したセンテンスが古かっただけじゃなく、長尺のしゃべりを含めて全部古かった。それをたったひと言で封殺された感じがしました。

 なるほど、そういうタイミングの神様を天才と呼ぶんだなと。もしこれが、僕がしゃべり終えて1秒間を置いてから、「古舘さん、たとえが古いですね」と、もうちょっと長く言ったら凡庸ですよ。絶妙のタイミングで、「古舘さん、たとえ古っ!」と。天才にはかなわないなと痛感した瞬間でした。