物流大戦#10Photo by Yuito Tanaka

アマゾンジャパンの「自前物流」が膨張を続けている。これまでアマゾンは中堅物流会社に一部配送を委託し、インターネット通販を維持してきたが、その依存度すら下げようとしている。ヤマト運輸など大手は配送料の値上げ要求に動いており、付かず離れずだった物流各社の「アマゾン離れ」が加速する可能性もある。特集『物流大戦』の#10で、アマゾンとヤマトの一進一退の攻防戦に焦点を当てる。(ダイヤモンド編集部 田中唯翔、重石岳史)

ECの巨人に宅配業者が値上げ要求!
映画「ラストマイル」の世界が現実に

 映画「ラストマイル」が8月23日に封切られ、公開3日間で66万人を動員するなど、ちまたで話題を集めている。

 映画は、外資系インターネット通販「DAILY FAST(デリファス)」から配送された商品が連続爆破する事件を描いた物語だ。その終盤、あまりに安い運賃に激怒し、宅配を委託されている物流会社「羊急便」や、その下請けのドライバーらがデリファスに値上げを要求するシーンがある。

 だがデリファスからすれば、運送業者に払う運賃をできるだけ抑え、安く早く商品を届けることこそが、「全てはお客様のために」という彼らの理念にかなう当然の行動だ。無駄なコストはカットして利益を増やさなければ、株式市場の期待にも応えられない。そんなデリファス経営陣の姿が、映画では描かれている。

 それは映画の中だけの話ではない。実際に今、インターネット通販最大手のアマゾンジャパンに対し、「羊」ではなく、「クロネコ」のヤマトホールディングスが、運賃の値上げ交渉に挑んでいる。

「ヤマトはいつになく強気だ。交渉の結果が業界に与える影響は大きい」

 物流業界の多くの関係者が、交渉の行方を注視する。取材で判明した交渉の舞台裏を、次ページで明らかにする。