「常識的に考えても、立場の上の者が下の者に暴力をふるうのはいけないことです。しかし、母は殴られるようなことをした妹のほうが悪いという立場でした。そして、母以外の父や親戚は兄がしていることは暴力ではないという認識でした」

 また、兄は大学生になってからも母からお小遣いをもらっていたのに対して、E子さんは学費も返済義務のある奨学金で工面するように言われ、自分の家にお金がないことを理解した。それ以降は学業の合間にアルバイトで自分の生活費をまかなっていた。

 長い間、いろんなことを我慢してきたが、母はあるとき自分の仲間すらも否定してきた。E子さんは耐えきれず泣きながら思いを訴えた。すると、「まだ、こんなことで泣くのね。」と笑われたので、「もう同じ土俵で物事を考えてはいけない」と思い、それ以来、母に自分の気持ちを伝えるのをやめた。

「『そんなに家族が嫌で毎日がつらいのであれば、早く親元から離れればいいじゃないか』と思うかもしれません。でも当時は、家を借りて一人暮らしをするための知恵や収入が無かった。一度だけ父に、もう限界だから家を出たいと訴えたところ『俺だってもっと酷い目に遭っているのに、お前は俺を置いて出ていくのか』と言われ、家を出ることをあきらめました」

「うちの親たちはおかしいと思っていても、誰にもことの深刻さは理解してもらえず、我慢するしかありませんでした」