母親の世代では、自分の意思で学業や職業を決めるのは難しい時代だった。閉塞感から自分が成し遂げられなかった夢や希望を子どもに一方的に押し付けていたとしたら、毒親を排除するだけの「引き算」では物事は解決しないだろう。     
     
 むしろ、家族という閉ざされた環境のなかに親子を閉じ込めるのではなく、子どもが友達の親、近所の人、学校、習い事など多くの大人と関わりを持つことで毒におかされないようにする「足し算」の発想が必要なのではないかとE子さんは思い始めた。
     
 もちろん毒親から逃げることは最優先されるべきだろう。しかし、もしそれが難しい場合、E子さんのように「足し算」の発想で自分の道を切り開けば、縁を切らなくても親と距離を置くことができるようになる。子どもが自力で突破するのは限界がある。そのためにも周囲のサポートや環境の整備が必要になってくる。