歴史的なエミー賞18冠
『SHOGUN 将軍』ヒットの理由は?
「米国テレビ界のアカデミー賞」と称される由緒あるエミー賞、その第76回が行われ、真田広之がプロデュースと主演を務める『SHOGUN 将軍』が本年度最多の25ノミネートを記録した。これが7月のことである。
そして授賞式が9月15日に行われ、同作品は史上最多の18冠を達成した。この18冠というだけでもものすごい歴史的偉業なのだが、それを日本由来の趣きが強い作品が達成したということがまた同時にものすごく、その快挙を称えるべく、メディアはちょっとしたお祭り騒ぎになっている。なお、今回日本人の受賞者は9名に上り、これも史上最多となった。
そしてこの快挙は、今後の世界のエンタメ界に影響を与える大いなる出来事であるということが、あちこちで言われている。『SHOGUN 将軍』を深掘りする記事はすでに多くあるが、本稿では同作品の魅力やヒットの理由、成し遂げたことに加えて、制作スタジオFXの特殊性、エンタメ界トレンドの中における『SHOGUN 将軍』ヒットの位置付けなどについて記していきたい。
同作は、小説家ジェームズ・クラベルによる、アメリカとイギリスでベストセラーになった『将軍』(1975年)を原作に持つテレビドラマシリーズである。
関ヶ原の戦いの前日譚を描いた「陰謀と策略が渦巻く戦国スペクタクル」(公式サイトより)で、視聴した印象をごくざっくり伝えるなら「海外資本の、ものすごく気合の入った知略の天下取りの時代劇」という趣きである。史実を元にインスパイアされたフィクションで、主人公の吉井虎永は徳川家康がモデルになっている。
主だったヒットの理由を挙げるなら、まず「主人公が魅力的」がある。真田広之が演じる虎永は、品があり、多くを語りすぎないところに矜持と意思の強さを感じさせ、それがリーダーシップとなっているような人物である。アメリカでは、今年の大統領選の混迷を引き合いに出して、「虎永のようなリーダーをアメリカは求めている。『SHOGUN 軍』はアメリカ国民の願いのひとつの形」と評する声まである。