スタントマンいらずのアクション俳優としても活躍し、殺陣のうまさにも定評がある真田広之だが、本作ではあまり動かない。しかし日本舞踊で「名取」となっているほどの腕前もあってか所作が美しく、また俳優としての凄みある演技を見せてくれるから、「魅力を感じるな」という方が難しい。なお真田広之は本作で日本人としては初めてとなる主演男優賞を受賞している。
また、近年のアメリカのテレビドラマの舞台がオフィスやレストランなどとなる傾向があるのに対し、『SHOGUN 将軍』のスケールの大きさが喜ばれたという話もある。
壮大なスケールの物語を描いたテレビドラマシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』は2019年に完結したが、この作品が『SHOGUN 将軍』批評の際に持ち出されることもよくあることから、両作品が持つ面白さの類似性と、『SHOGUN 将軍』が『ゲーム・オブ・スローンズ』ロスを埋める役割を果たしているといった考察もなされている。
まあ、『SHOGUN 将軍』はこれほどの人気を博しているので、作品の分析を行えばそれがそのまま「人気の理由」として紹介できるくらいにまでなっている。
「日本らしさ」のシェアが
徹底された制作現場
日本文化の面白さ・興味深さも海外ではウケたようである。折に触れて日本に通底している概念が説明されることがあり、たとえば第1話では、日本文化を知る外国人が「是非もございませぬ」という言葉を、日本文化を知らない外国人に向かって「自然の摂理にはあらがえない。自分の役割を受け入れるだけ」と説明する。西洋諸国の視聴者には、おそらく新鮮な哲学として聞こえてくるはずであろう。
また、古来の日本文化として海外によく知られ、面白がられている(あるいは気味悪がられている)ものに、侍や忍者、切腹などがある。
『SHOGUN 将軍』にもそれらや、他に野蛮で不可解な日本人の風習・やり口が登場して視聴者の興味を引くのだが、海外に広まっている誤った認識に迎合することはせず、たとえば忍者は超人的な身体能力を発揮するハリウッド的な造詣でなく、粛々と忍び足で移動する。