特徴②前提知識がない

――相手が自慢したいことを見極めるのは難しそうな気がします。

勝木 実は、マウンティングは大学受験の現代文と似ているんです。下線部の筆者の言いたいことは何かという問いを常に考え続ける。AIにはできない文脈理解と、臨機応変で当意即妙なコミュニケーションが、唯一無二の人間の競争力なわけです。

yuuu SNSやネットの情報など、相手が出ているなんらかのメディアがあれば、事前に目を通しておくのはマストです。その人が関わった一番大きなプロジェクトのこと事前調査するのでもいいですし、逆にあまり注目されていないプロジェクトに陽を当ててあげるのもいいかもしれません。一大プロジェクトってどの集会でも話題にのぼるじゃないですか。なので、逆に「これは頑張ってたのにあまり注目されなかった」という人知れぬ苦労を汲み取ることで、相手も理解者がいる喜びをひしひしと感じてくれそうですね。

勝木 マウンティングしている人を観察したり研究するのも、コミュニケーションのセンスを磨くうえで非常に有益ですね。近頃は英語やプログラミングなど数字で測れる計測できるスキルばかり身につける傾向にありますが、数字では測れない相手が何を言いたいかを察する力も同じくらい重要だと思います。こうしたセンスは数字では測れません。当然、会食を制することだってできますよ。

特徴③マウントにマウントで返す

――会食で相手の語りたいことを引き出すにはどうしたらいいですか?

勝木 先程と被りますが、事前の情報収集で、相手に何を語らせたら喜ぶのかを予想しておくんです。例えば、慶應の體育会系出身の人だとカラオケで「若き血」を入れて一緒に歌うのも良いですね。趣味がサウナだったら、サウナのおすすめを聞いて、「行ったことないのでぜひ行ってみます!」と伝えるととても喜ぶと思いますよ。

yuuu これは、「行ったことない」までが大事です。知っていることを「知らない」と言うのはすごく重要です。途中で矛盾が生じるといけないけれど、あまりバレなさそうなものなら、僕は知らないふりをします。

勝木 美しい嘘ですね。

yuuu 言い得て妙ですね(笑)。だって、相手が「2万円の寿司がすごくおいしかった」と話しているのに、自分が「そういえば最近6万円の寿司屋に行きました」なんて言えないじゃないですか。マウントをマウントで返した瞬間、相手のマウントが機能しなくなってしまいます。なので、あえて知らないふりをして、自分はそのカテゴリーのリテラシーがないという安心感を出した上で、相手の話を引き出してあげるのも一手です。いかに相手のマウントを尊重するかという、マウントリスペクトの精神を持ってコミュニケーションを取ることが結構重要なのではないでしょうか。

――つまり、飲み会では、相手に思う存分マウントさせてあげるのもアリなんですね。

yuuu はい、そうですね。僕もよくやりますよ。そもそも「自分のしたい話を思う存分話せる時間」って、とても嬉しいですよね。だからこそ、その時間を相手に提供するのは、相手へのおもてなしです。マウントを取られやすいと悩んでいる人もいるかもしれませんが、それはむしろ強みになります。受け答えの仕方次第で、相手から「可愛いヤツ」と思ってもらえる可能性も高まりますし。前向きに捉えていいと僕は考えています。