そのため、妻に所有権を相続させてしまうと取得財産額がその分大きくなり、場合によっては遺留分を侵害してしまうリスクがあります。そこで、所有権ではなく、より評価額の低い配偶者居住権を遺贈することで遺留分を侵害しなくて済むどころか、住まいを確保でき、かつ、老後資金としての預貯金まで遺せる可能性が広がります。

「財産は子どもに相続させるが、妻の老後が心配…」遺言書に何と書くべき?【行政書士が解説】『「本当に」使える遺言書の取扱説明書』(中央経済社) 佐山和弘 著

 ちなみに配偶者居住権を取得した場合、固定資産税や修繕費は必要費として妻が負担することになります。ただ、子どもにとっては配偶者居住権付きの家の所有権を相続したところで自由に使うことはできませんし、配偶者居住権付きの家やその敷地を買う人はまずいないため売却することもできません。そういう意味では子どもが割を食う方法と言えます。

 なお、文末の書き方に注意点があります。

 相続人に遺す場合は「相続させる」、相続人以外に遺す場合は「遺贈する」と遺言書に書きます。しかし、例外的に配偶者居住権の場合、妻は相続人ですが「相続させる」と結ぶのではなく必ず「遺贈する」と結んでください。間違えやすいのでお気を付けください。