日本では、同じような選抜方法は難しいのではないでしょうか。アメリカと同じような仕組みで入試を行うには大学に十分な数のスタッフがいて、じっくり面接をしたり、書類審査をしたりして、何ヶ月にも渡って学生をよく観察したうえで合否を判定しなければならないわけですから。

 今の中学入試のように、当日発表などという荒業はできません。

 大学が総合型選抜を行う理由は、一部の大学を除いて一般入試では受験生が集まらなくなってきたからです。必ずしも、総合型選抜がいいから採用しているというわけではないと思います。

 そういった状況なので、理系の学部学科に行くのに数Ⅲを履修せずに入ってくる学生がいるそうです。入学した途端に「なんで数Ⅲやらなかったんだろう?」と言いはじめる。逆に大学入試で数Ⅲは必要ないのに、高校時代に勉強しておいたことによって、そのときは「なんでこんなことやんなきゃいけないんだ!?」と思っていたけど、「やっておいてよかった!」って瞬間に出合う人もいる。人間、どこかで苦労しないといけないものです。

──苦労ってどこで経験すればいいでしょうか?

 人によりけりですよね。ご家庭の方針もあります。でも、どこかで頑張ったという経験は、子どもの人生にとってすごく大事だと思います。

──中学受験でも「ゆる受験※」が流行っていますが、それはどう思われますか?

(※ゆる受験=ゆるい対策で中学受験をすること。具体的には「勉強期間1~2年で・難関校を狙わず・無理をしない受験」のことを指す。「自己アピール(プレゼン型)入試」「得意科目入試」「英語入試」「思考力入試」、公立中高一貫校と併願できる「適性検査型入試」などがあり多様化している。)