居眠りする小学生写真はイメージです Photo:PIXTA

受験は辛く苦しいものでないといけないのか――。ゆるい対策で中学受験に挑む人が増えている。ブームの裏側にある学校と受験生、双方の切実な事情とは?SAPIXの広野雅明先生に「中学受験の素朴な疑問」をぶつける連載。第10回(全12回)は「ゆる受験ブームの功罪」を取り上げる。(聞き手・文/教育アドバイザー 鳥居りんこ)

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人間、どこかで苦労しないと
いけないものです

――先日、医学部に強いと言われている学校の校長先生と話したのですが「中高一貫校はものすごく努力をしていて、日本の高校生は世界トップクラスの実力を付けさせているのに、大学に入ったら、遊びほうけてレベルが下がるので誠に嘆かわしい限り」とご立腹でした。

 開成の前校長の柳沢先生も「日本の高校生は世界トップレベルだ。でも、大学に入った途端にやる気をなくし、努力をしなくなる子もいる」と仰いました。そういう意味では年内入試※派はその点を声高に指摘します。

(※年内入試=大学入試の総合型選抜〈旧AO〉と学校推薦型選抜を指す。従来型である一般選抜〈=一般入試〉が年明けから始まるのに対し、年内に合否が出ることが多いため「年内入試」と呼ばれている。年内入試は「この大学でこの勉強がしたい!」という人が受ける入試であるため、面接や小論文によるアピールが重要になる)

 しかし、すべての子どもが大学に入る前に自分のやりたいことを見つけて、高校の間に計画的に取り組むというのは難しいのではないかなと思います。東大のように2年間の教養課程でやりたいことを見つけて、それで最終的に進路を決めるというのは決して悪いことではないと思います。

 東大生に東大に行った理由を聞くと「偏差値が一番高いから」だけではなく、「専門課程で何を学ぶかを教養課程で学ぶ間に考えることができるから」も多いです。東大には進路変更の自由※があるからです。前期課程で幅広く教養を学び、後期課程で専門分野を究めるカリキュラムとなっています。

(※進路変更の自由=通称「進振り」、正式名称「進学選択」と呼ばれる東大独自の学科振り分け制度のこと。2年生前期までの成績をもとに、3年生からの進学先学部・学科を決めることができる)