カタリーナ 「なるほど。あなた、自分の給与を時間あたりの賃金で考えたことある?」

生田 「え?これまで月給制だったから、あまり気にしたことはありませんけど」

カタリーナ 「転職すれば給与が上がると思っているようだけれど、両社を時間単価で比べたら、むしろ今の会社の方が高いことは分かってる?」

生田 「ええっ!?」

見た目の年収が上がっても、労働時間が延びれば、最低賃金を下回ることも

カタリーナ 「給与が上がるのは、単純に労働時間が長くなるから。そもそも1日の労働時間が1時間多いうえに、みなし残業時間が45時間ある。月平均の労働時間が160時間だとして、さらに45時間を加えた1カ月約205時間働いて得られる賃金ということ。今の会社は月平均140時間くらいでしょ?時間外労働の割り増しも考慮すると、時間あたりの賃金は今の会社の方がずっと高くなるわね」

生田 「働く時間はちょっと長くなるなぁとは思っていましたが、そういう視点で考えていませんでした」

カタリーナ 「大抵の人はそうよ。給与という見た目のインパクトは大きいから。ざっくりと給与の総額から労働時間を割って、時間当たりの賃金を考えてみるといいわ。みなし残業手当が多い割に給与がそれほど高くない場合、下手をすると最低賃金を下回ってしまうことさえあるのよ」

生田 「なるほど。転職先を検討するときは、気に掛けるようにします。年収が上がっても、今より時間単価が下がるのは、ちょっと違うと思うので」

カタリーナ 「もちろん給与以外の条件も大事だから、やりがいや働き方など含めトータルで考えてみてほしいわ」

生田 「はい。もっと冷静になって考えてみます。まずは上司に謝らないと!」

<カタリーナ先生からのワンポイント・アドバイス>
●退職手続きに関しては、辞職の通知(退職届)と合意解約の申し入れ(退職願)があるが、実務上は合意解約の申し入れと解釈される傾向にある。
●退職の意思表示は、口頭でも文書でも有効となる。退職を申し出て会社が承諾すると、会社が撤回に合意しない限り、基本的に撤回はできない。
●最低賃金以上かどうかは、月給制の場合、原則として「月給(通勤手当や残業代は除く)÷1カ月の平均所定労働時間数」で確認できる。
●「年収÷年間総労働時間」で、ざっくりと時間あたり賃金を考えてみると分かりやすい(定額残業制の場合、定額残業時間×1.25を加える)。
●最低賃金は、地方(都道府県)によって異なる。東京都が一番高く、2024年10月1日から時間額1163円になった。参考:厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」

※本稿は一般企業にみられる相談事例を基にしたフィクションです。法律に基づく判断などについては、個々のケースによるため、各労働局など公的機関や専門家にご相談のうえ対応ください。

(社会保険労務士 佐佐木由美子)