「本当の儲け」はどうなっている?
事業プロジェクトと期間利益との関係

 簡単な例を使って、期間利益に関する基本的なお話をしましょう。ある自動車メーカーが工場に10億円投資して4年間EVを作るプロジェクトを企画しました。一台の価格は100万円で材料費は50万円です。4年間で4000台売れました。さて、いくら儲かったでしょう。

・4年間の売り上げ(収入):40億円(100万円×4000台)

・4年間の費用(支出):30億円(工場10億円+材料代20億円[50万円×4000台])

・4年間の儲け:10億円(40億円-30億円)

 この10億円は4年間の儲けであり、収入支出の差額として10億円分の現金が増えたということを意味しています。

 それでは、1年目、2年目、3年目、4年目のそれぞれ1年間の利益がいくらかを考えましょう。毎年1000台作ってそれが全部売れたとします。また、最初に工場に投資した10億円は4年間で均等に費用化(減価償却)したとします。

・1年間の売り上げ:10億円=100万円×1000台

・1年間の費用:7億5000万円=工場の減価償却費2億5000万円+材料代5億円(50万円×1000台)

・1年間の期間利益:2億5000万円=10億円-7億5000万円

・1年目から4年目まで毎年2億5000万円の期間利益が計上されて、4年間での儲けは10億円です。

 ここまでのお話で理解してほしいことは、本当の儲けとはプロジェクト全体で計算されるべきものであり、期間利益はその一部であるということです。その観点から言えば、この企業は1年目、2年目で2億5000万円の利益をあげていますが、儲かってはいません。3年目から儲かり始めるのです(その理由は本稿を読み進むとわかります)。このことをしっかり理解してもらうために、これまでの例を少々変えて考えてみましょう。