なぜ利益が続いても儲けが出ないのか
「損益分岐点」を見極める

 1年目、2年目は1000台ずつ売れましたが、強力なライバルが登場したことで、現在売っているEVは3年目、4年目に全く売れませんでした。

 1年目、2年目は直近の例と同じなので、1年間の利益は2億5000万です。3年目、4年目は1台も売れなかったので減価償却費分の2億5000万円の赤字です。ということで、4年間の儲けはまったくなしでゼロということになります。

 ここで、1年目、2年目に利益があがっているときには儲けがあるのではないかという読者もいるかもしれません。実は儲けはありません。最初に工場へ10億円投資するので、1年目、2年目に2億5000万円の利益があっても、10億円が回収できていないので、儲かってはいないのです。

 それでは、この例におけるプロジェクトでは何台売ったら、本当の儲けに繋がるのでしょうか。

 これはプロジェクト全体の損益分岐点を求めることです。通常、1年間の固定費、変動費、売り上げで、損益分岐点を求めることがありますが、それは期間利益が生じる売上高を算出しているだけで、本当の儲けがあるかどうかを保証する物ではありません。本当の儲けが生じるかどうかは、プロジェクト全体の損益分岐点を計算する必要があります。

 最初に10億円投資をして、1台売るたびに100万円の収入と材料代50万円の支出があるので、10億円÷(100万円―50万円)=2000となり、2000台売ったところで10億円の投資を回収できます。そして、損益分岐する2000台をいつ達成できるのかということは非常に重要なことになります。プロジェクトの損益分岐点を超える時点から本当の儲けが生じるのです。

最初に出る利益は関係ない?
損失が続いても儲けが出るケースとは

 では次に、損失が続いても、儲けが出るケースを考えてみましょう。4年間で10億円儲けたのは同じですが、1年目と2年目に500台しか売れなかったものの、その後3年目にと4年目に1500台売れた場合を考えてみましょう。

 1年目、2年目はどうなるでしょうか。

・1年間の売り上げ:5億円(100万円×500台)

・1年間の費用:工場の減価償却費2億5000万円+材料代2億5000万円(50万円×500台)

・1年間の期間損益:0=5億円―5億円

 2年間は期間利益ゼロです。一般的には儲けなしです。