世界中の企業が抱えるビジネスの課題をとんでもないスピードで解決し、次々にイノベーションを起こしてきたビジネスデザイナーの濱口秀司氏が、ダイヤモンド社と共に他に類を見ないワークショップ<QXA>を展開している。ビジネスに潜むバイアスを鮮やかに打ち砕き、あっと驚くソリューションを提示し続ける伝説のイノベーターは今、何を考えているのか。ワークショップ開催に先んじて近況を聞いた。(聞き手/音なぎ省一郎、坂田征彦、構成/フリーライター 小林直美)
増えてきた日本企業のコンサルティング、そこから得た気付き
──振り返れば、濱口さんにダイヤモンド社で初めてワークショップを開催していただいたのが2010年。翌年にはUSBメモリーを生み出した方法論「DFW(ダイナミック・フレーム・ワーキング)」を学ぶ内容に発展しましたが、15年からは参加者から次々と投げ掛けられる問いに、時には数日にわたってひたすら答えていただくという修行のようなワークショップになりました。今年の開催に当たって、まずは近況をお聞かせください。
忙しいです。なぜか予定はいつも埋まっていて、オン・オフもなければ土日がいつかも分からない。一昨日はロンドン、昨日はジュネーブで仕事をして、先ほどロサンゼルスに戻ってきたところです。フライト中にひげをそる暇もなかったので、今日はむさ苦しい姿ですみません。
──相変わらず世界を飛び回っているんですね。仕事のやり方に変化はありますか。
ビジネスの課題をあらゆる角度から捉えて、ソリューションはシンプルに導き出す──というコンサルティングのスタイルは全く変わっていません。ただし、この十数年でさらに多くのプロジェクトに関わってきたので、課題の捉え方にしろ、問題の解き方にしろ、進化したと思います。より複雑な課題を、よりスピーディーに解き、より取り組みやすいソリューションとして提示できるようになったのではと思います。
変化といえば、日本企業との仕事が増えたことかな。以前は欧米企業のコンサルばかりしていましたが、今は日本企業も三分の一ぐらい。そこから影響を受けて考え方が変わった部分もあります。
日本企業って「歴史」や「らしさ」や「DNA」を大事にしますよね。今さらながら、何をするにも志が重要だと気付きました。こう言うと語弊がありますが、僕、もともとは社会貢献なんかどうでもいいと思ってたんです。事業で利益を出し、その半分を税金として収めることで行政に委託し、残りの半分を自らの事業のアップグレードに割り当てる。それが企業における社会貢献の本来の形だろうと。でも、今はそうでもないな、と思うようになりました。問題解決にも、その企業が社会と向き合う姿勢を意識して折り込むようになりました。