東洋大学が年内に学力試験で選抜する方式を2025年度入試からスタートする。ここで合格した学生は年明けの一般選抜で東洋大以下の大学は受験しない可能性が高い。少し格上の大学を受験するつもりだった受験生も、早々に切り上げるかもしれない。となれば、東洋大を筆頭とした首都圏中堅私立大学群「日東駒専」の日本大学、駒澤大学、専修大学は、来年以降に年内学力試験への参戦を避けられないはずだ。さらに格上となる首都圏の難関私立大学群「MARCH」からの参戦もあるのか。特集『大学格差』(全20回予定)の#6では、ついに首都圏でも始まった年内学力試験の動向を追い、併せて、首都圏45大学について43年間の偏差値の推移早見表を掲載する。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美、ルートマップマガジン社取締役・編集長 西田浩史)
基礎学力テストだけの年内入試
首都圏でもついに東洋大が導入
基礎学力テストだけの年内入試がついに首都圏でスタートする。この「年内学力入試」は、関西では「公募推薦(公募制の学校推薦型選抜)」として定着し、「産近甲龍」(京都産業大学、近畿大学、甲南大学、龍谷大学)や「摂神追桃」(摂南大学、神戸学院大学、追手門学院大学、桃山学院大学)などの中堅私立大学群が実施している。一般選抜前の“青田買い”を狙ったもので、併願可。これらの大学群の上を目指す学力優秀層は、早い段階で滑り止め先を確保しようという感覚で受験している。
首都圏では学力重視の年内入試として近年、面接などを伴う総合型選抜(旧AO入試)に基礎学力テスト重視型を設ける大学が出てきた。そして2025年度入試において、東洋大学がついに関西方式と同じ基礎学力テストだけの年内学力入試を導入。東洋大が導入を発表した後に、大東文化大学も実施を公表した(下図参照)。
このタイミングで首都圏で導入するのは「関東の高校の現場における文化的なものが変わってきたから」と東洋大の理事で入試部長の加藤建二氏は言う。これまでは、推薦を主体とする年内入試で受ける大学は一つというスタンスの高校が少なくなかった。そんな中で併願可能な年内入試を実施する大学が増えたり、桜美林大学が24年度入試で学力重視型の総合型選抜を始めたりして、学力を測る併願可の年内入試を受け入れる土壌ができたのを肌で感じたのだ。
桜美林大の高原幸治入学部長によると、「総合型選抜で多面評価されることが得意な学生もいる一方で、学力評価の方が力を出せる学生もいる。後者にとって学力重視型が救いになり、併願可能だから受けやすいという反応」だという。
年内入試のために生徒個々に小論文や面接の対策を指導することに教師がほとほと疲れたというのもある。現場が回し切れず、一般選抜受験組は塾任せになっていたりする。年内学力入試は単純に学力だけで年内に決着をつけられるし、一般選抜を受ける学生にとっても年内に一つチャンスが増える。
東洋大の出願は11月。志願者数が1万人なのか2万人に及ぶのか、まさか3万人まで膨らむのかはふたを開けてみないと分からないため、試験会場は多めに確保している。「ライバルがいない今年が一番志願者が来る」と加藤氏。つまり来年度からは他大学も参入してくると見込む。
東洋大と受験難度が同等あるいはそれ以下の大学にしてみれば、年内学力入試で東洋大に合格した学生は、年明けの一般選抜で自分の大学を受験してくれなくなる。となれば、早々に自ら年内学力入試へ参戦するしかない。
「やりたいやりたくないじゃなくて、やらざるを得ないっていう状況」(都内の大学職員)で、やらないところは試験問題を作って実施する体力がないか、学内の意思決定が迅速にできない弱さを露呈するようなものだという。
年内学力入試参戦組のうち、最も受験難度が高くて人気のある大学は、年明けの一般選抜に臨む学力優秀層の青田買いで一番優位に立てる。実際、関西では近畿大の公募推薦に学力優秀層の受験者が集まり、難化している。
首都圏の年内学力入試で近畿大のポジションになりそうなのは今のところ東洋大だが、格上の大学が参戦してくればポジションを奪われかねない。
次ページでは、東洋大キラーとなり得る大学を見ていく。併せて、首都圏私立45大学について、43年間の偏差値の推移早見表を掲載する。