汎用型の生成AIは企業の専門業務に対応できない。そこで、生成AIをカスタマイズして個別のビジネス現場への実装を可能にするソフトウエアや、IT人材サービスの人気が高まっている。特集『生成AI 大進化』の#4では、生成AIで注目が集まるソフトウエアや人材関連の日本企業8社を、業界のプロが厳選した。(QUICK Market Eyes コメントチーム 阿部哲太郎)
業界の商習慣にAIを対応させる
コンサルティングが人気
2024年は世界的に企業での生成AIの導入と活用が進んだ。例えば、生成AIをビジネスの現場に実装できる形にカスタマイズするなどの需要が急速に増えており、日本でもこれを請け負うソフトウエア企業などに追い風が吹いている。
電子情報技術産業協会(JEITA)が23年12月に発表した生成AI市場の見通しによると、世界需要額は23年の106億ドルから30年には2110億ドルと年平均成長率53.3%で成長し、約20倍の規模になると予測されている。
分野別では、最も規模が大きくなると見込まれるのが製造業で、製品開発や現場の効率化といったさまざまなユースケースが想定されている。次いで金融、通信・放送、流通、社会インフラなどの分野での活用が予想される。
足元の生成AIの導入状況を見ると、社内のDX(デジタルトランスフォーメーション)や作業効率化といったオペレーション改革の段階から、コールセンターの対応サポート、AIによる審査・査定などの高次のステップへと移りつつある。
24年以降の生成AIのトレンドとして、「パラメーター」(AIの回答精度を高めるために調整する変数)の増加やオープンソース化による「モデルの強化」、文書編集ソフトや表計算ソフトとの統合によるAIのエージェント化が加速すると予想されている。
さらに、業界ごとのビジネス特性や専門用語に適応したモデルなどの「ドメイン(部分領域)特化」も重要なポイントとなる。今後は、業界特化や個社対応などにより、生成AIを活用するためのカスタマイズがビジネスチャンスとなることが期待される。
AIコンサルティングのニーズも高まっている。特に、世界に比べて生成AIの業務への実装が遅れているという指摘のある日本企業は、導入する際にリテラシー(教育)やセキュリティー、偽情報(ディープフェイク)対策や著作権問題といった面でのコンサル需要が中長期的に拡大していくとみられる。
次ページでは、こうした生成AIの実装において本格的に動き始めた注目の日本企業8社を業界の目利きが厳選した。