それでは、3年目4年目の期間利益はどうなるでしょう。

・1年間の売り上げ:15億円(100万円×1500)

・1年間の費用:工場の減価償却費2億5000万円+材料代7億5000万円(50万円×1500)

・1年間の期間損益:5億円=15億円-10億円

 ここからわかることは、1年目、2年目に儲けがなくても、3年目、4年目に儲けがあれば、このプロジェクト全体で10億円儲けたことになります。

儲けの「理想のサイクル」は
投資した資金を回収し販売台数を増やすこと

 さて、本稿の最初で採り上げた中国新興EVメーカーの営業利益の推移を再び考えてみましょう。

 ここまで述べた2つのケースでおわかりのように、1年を超えるプロジェクトの場合には、期間利益は儲けの途中経過を示している指標に過ぎません。それでは、中国新興EVメーカーのプロジェクトとはどんなものでしょうか。ここではLi Autoを取り上げて、考えてみましょう。この表では営業損益の計算プロセスと、CF(キャッシュフロー)の情報が示してあります。

 2019年から営業利益のマイナス(営業損失)が2022年まで続いていましたが、2023年に営業利益がプラス(黒字)になりました。その期間に、売り上げ、売上総利益(売り上げ-売上原価)は毎年猛烈な勢いで増えています。それにもかかわらず、営業利益が長らくプラスにならなかったのはなぜでしょうか。それは研究開発費と販管費(販売費および一般管理)が増えているからです。

 特に研究開発費(研究開発にかける支出)の伸びはすごいです。おそらくは自動運転のための研究開発でしょう。研究開発費は将来のEV技術開発のための投資です。販管費は将来の売り上げ拡大のためのマーケティング費用や広告宣伝費です。これらの費用の多くは当該年度の売り上げのためではなく、将来の売り上げにつながる費用です。

 このように研究開発費、販管費にお金をかけることができるのは、EV市場が中国国内では確実に拡大するだろうという確信があるからに違いありません。中国の自動車市場におけるEVシェアの伸張は、中国政府主導の政策であることは周知の通りです。したがって、EV各社は安心して研究開発投資ができるのです。

 ここで、キャッシュフロー計算書も見てみましょう(表の下3行)。企業のキャッシュフロー(お金)の流れをまとめたものです。

 財務活動によるCF(キャッシュフロー)とは、事業を行うための資金の調達をまとめたものであり、金融機関からの借入や返済、株式発行による資金調達、株式配当などの現金の出入りをまとめたものです。財務活動のCFがプラスということは資金調達を行っているということです。Li Autoは2019年から2022年まで猛烈に資金調達を行っています。