トヨタイムズはつまらないが…

 コロナ禍において、日経新聞をはじめとする既存メディアはトヨタグループの努力や成果をネガティブな見出しで報じた。章男氏としては内心、忸怩たるものがあったのだろう。彼は自らメディアを立ち上げ、トヨタの主張や実績を直接国民へ伝える手段を作り出したのである。

 章男氏の行動からは、外部の評価に甘んじることなく、トヨタの真実を正確に伝えたいという強い意志がうかがえる。こうした愚直な姿勢が、彼のリーダーシップを支えているのだろう。

 ただ、いくらトヨタが巨大な企業であっても、自社でメディアを立ち上げる必要が本当にあったのかは疑問が残る。

 もう少しうまく立ち回れば、自分たちの意図を理解して報じてくれるメディアもあっただろうし、日経新聞も単に考えなしに見出しをつけただけかもしれない。広報を通じたコミュニケーションで、もっと歩み寄りの余地があったのではないかとも思える。

 トヨタイムズのコンテンツの多くは、正直なところまったく面白みがない。しかし、章男氏の言葉やその思考法には魅力があるため、彼が登場する回だけはトヨタイムズの中でも非常に面白いものとなっている。