相手が何を聞きたいか、どのように聞きたいか、どんなメッセージが心に響くか。そしてタイミングを逃さないことです。そうすると、相手からも興味深く積極的に聞いてもらえるでしょう。

 選手の指導において、自分の感じた要点だけをしっかり伝えたから、自分は「説明責任を果たした」「十分理解させた」と思っている指導者がよくいます。しかし精神的に心が安定せず聞ける状態になっていない相手に、一方的に自分の言葉だけを発して良いことを言っても情報としてなかなか入っていくものではありません。

「伝えた」ということに満足して、伝わっていないのは「話を聞いていない選手が悪い」と強く主張する指導者もいるようです。こういった指導者のもとではチームは何も変わりませんし、肝心なところで勝てないチームの典型でもあります。指導者的立場の人はそのことを十分認識しておくことが大事だと思います。

 選手対象のミーティングでは、「自分だったらこう聞きたい」「このメッセージなら理解しやすい」「この言葉なら士気が上がる」など、そんなことを頭で整理してタイミングよく伝えていきます。

 そして今、最も「響きやすい言葉」を選択して的確に伝えることが大切だと感じています。教師の頃からそういったことを心がけて、生徒と接していたので、今の自分のなかでは特に難しいことではなくスタンダードになっています。