お金のかかる「旅行・観光」は
親の所得が低ければ体験ゼロ

 次は「文化的体験」の領域における体験格差の現状を確認していく。その中でも比較的お金がかかりやすいと考えられる「旅行・観光」と、お金がかかりにくい「地域の行事・お祭り・イベント」という2つの「体験」に注目してみたい。

 まずは「旅行・観光」だ。予想通りというべきか、やはり世帯年収ごとに子どもの参加率に2倍近くの大きな差があることがわかった(グラフ14)。世帯年収600万円以上の家庭で42.8%、300万円未満の家庭で23.2%となっている。

グラフ14:「旅行・観光」への参加率(世帯年収別)同書より転載 拡大画像表示

 旅行には様々な費用がかかる。交通費、宿泊費、滞在中の食費、お土産代。家族の人数や日数、旅行先にもよるが、特に泊まりの旅行の場合は数万円、数十万円というまとまったお金が必要になってくる。海外旅行ともなればなおさらで、私たちが支援してきた子どもたちの多くにとってはいまだ縁のない体験だ。

 私たちがかつて塾代を支援し、現在はすでに大人になっている男性は次のように話す。彼が子どもの頃は生活保護を受給していたという。

 お出かけとか旅行とか、基本何もなかった。保護を受けているときはどこにも行かないし。