「復讐」がテーマとなったマンガや映画は多くの人を夢中にさせるが、現実世界で復讐する場面というのはそうそうない。そもそも復讐は悪いことなのか?復讐は甘美なもの、と語る立命館大学大学院准教授の戸谷洋志氏が、正しい復讐とはなにかを解説する。※本稿は、戸谷洋志『悪いことはなぜ楽しいのか』(ちくまプリマ、筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。
「刑罰が甘い」「加害者にも同じことを」
他者への苦しみの欲求の正体
私たちが他者を苦しめたいと思うことは、実は意地悪以外にも起こりえるように思います。意地悪は、他者が苦しんでいる姿が楽しくて行われます。しかし、別に楽しくもなんともないけど、他者を苦しめたくなることが、人間にはあるからです。
それが、復讐です。たとえば私たちは、他者から損害を被ると、相手に同じ目に遭わせてやらないと気が済まない、と思うことがあります。また、人の命に関わる凶悪な犯罪に関するニュースを見ると、「加害者にも同じことをするべきだ」、「いまの刑罰は甘い」といった声を耳にすることもあります。
いわゆる、「目には目を、歯には歯を」という発想です。でも、そうやって他者が苦しんでくれたところで、自分がハッピーになるわけではありません。そのとき私たちは、意地悪とは異なる形で、他者が苦しむことを求めているように思えます。