ホンダの死闘#5Photo:REUTERS/AFLO

マツダ、スズキ、SUBARUを従えたトヨタ自動車は、日本の自動車業界では向かうところ敵なしに映る。だが、ホンダと日産自動車がふがいない業界が発展するはずがない。四輪の赤字体質に悩むホンダと、仏ルノーとの確執が絶えない日産が組めば、「ウルトラC」を演出することができるのではないか。特集「ホンダの死闘 四輪赤字」(全6回)の♯5では、ホンダと日産が統合した場合のシミュレーションをしてみた。(ダイヤモンド編集部 浅島亮子)

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日産、新体制がスタート
それでも消えないルノーとの離婚リスク

 10月8日、日産自動車の新経営体制が固まった。

 昨年11月にカルロス・ゴーン前会長が逮捕されて以降、日産の実質的な親会社である仏ルノーとの確執や、西川廣人・前社長の報酬不正疑惑が浮上し経営は混乱している。新体制が決まったことで、日産はようやく再スタートを切ることになった。

 新しい布陣は、CEO(最高経営責任者)に内田誠・専務執行役員(53歳)、ナンバー2のCOO(最高執行責任者)にアシュワニ・グプタ・三菱自動車COO(49歳)、ナンバー3の副COOに関純・専務執行役員(58歳)が就くというものだ。

 日商岩井出身の内田氏と生え抜きの関氏の経歴はある程度重複する。共にルノーとの実務経験があり、新旧の中国事業責任者である。ただし性格は正反対で、内田氏は商社マンのイメージとは正反対の慎重派で、関氏は上司にも盾突く戦略家タイプだ。

 特殊なのが、グプタ氏だ。日産が三菱自動車からグプタ氏をさらったかのような見方もあるが、実際には三菱へ出向していただけで「本籍」は日産にある。もともとはゴーン前会長のお気に入りで登用され、ルノーの勤務経験がある。グプタ氏の用意周到な性格が表れているのは、ゴーン氏に反旗を翻した西川前社長からの覚えもめでたかったこと。「仕事のできる風見鶏。根回しが上手で、日本人よりも日本的」(日産幹部)という表現がしっくりくる。

 木村康・日産取締役議長、豊田正和・日産指名委員会議長は「3人ともに国際経験が豊かで、アライアンスの進化に向いた布陣」と新体制を評価している。

 だが実際には、新体制は3者の意向が折り合った妥協の産物だろう。指名委員会は新生日産に“斬新さ・変化”を求め、西川前社長は(自身を失脚に追い込んだ)山内康裕・日産暫定CEOの排除を求め、ルノーはくみしやすい経営者を求めた。

 そのため、新体制が木村・豊田両氏が主張する通りの「アライアンスの進化」につながる布陣だとは到底思えない。この体制をもって、ルノーとのアライアンス堅持派と見立てるのは早過ぎる。