そして、少しずつでも読み進めれば、必ず終わりがやってきます。『百年の孤独』を読破した人は、そう多くはありません。
同じように、有名だけれど最後まで読んだ人が案外と少ないものに、2024年の大河ドラマでも話題になった『枕草子』があります。これも、夜に少しずつ読み進めるのに向いています。
「春は曙」で始まるところだけは原文で読むのがお勧めですが、あとは清少納言の発想の面白さに触れることを優先させ現代語訳でかまいません。光文社古典新訳文庫や、角川ソフィア文庫のビギナーズ・クラシックス日本の古典シリーズのものがいいでしょう。
大河ドラマといえば、2022年の『鎌倉殿の13人』では『吾妻鏡』も注目されました。これも現代語訳が角川ソフィア文庫のビギナーズ・クラシックス日本の古典シリーズから出ています。
角川ソフィア文庫のビギナーズ・クラシックス日本の古典シリーズは、原文も併記されており、読みやすいので、ほかの古典を読むときにもお勧めです。
このように、レーベルを基準に読む本を広げていくのもいい方法です。もしも現代小説を読み慣れていないなら、岩波少年文庫から選ぶといいでしょう。子ども向けのレーベルですが、わかりやすいため、苦手意識を持たずに読みすすめることができるはずです。
レーベルを頼りに読む本を決めるというのは、そのレーベルの編集者の審美眼に身を任せるということ。同じテーマの本を読む、同じ作家の本を読むのと同じように、同じレーベルの本を読むという読書の広げ方もあります。
新書は「読む」のではなく「吸収する」
私の場合、講義や講演、本の執筆の仕事をしている関係で、夜のうちに「次の日までに読んでおかなければいけない本」というものがあります。そのようなときは、夜、2冊くらいの本を枕元に置いて、一気に読みます。新書ですと、1冊30分~1時間くらいで読みます。
新書の場合、「読む」というより「吸収する」という感覚で読みます。多くの本が「情報を得るため」の本だからです。自分にとって必要な情報のみを吸収し、わかっている部分や本筋から外れている部分は読み飛ばします。