新書のいいところは、情報がちゃんと詰まっていて便利な点です。新書を書く身としては、いかに内容を凝縮してこの限られたスペースに詰め込むかを必死に考えるわけですが、いざ読む立場になると、さっと読めるわけですから、気楽なものです。

 同じテーマのものを一日に何冊も読むと、どの本でも同じようなことを言っている部分も出てきます。そういう部分を読み飛ばしていくと、本を読むのがどんどん速くなります。

 1冊に4~5時間かけてじっくり読むより、何冊かの本を読み飛ばしながら読み進めるほうが、結果として新しい知識の吸収量は増えます。30分~1時間の間に、集約的に自分にとって必要なところだけを読んでいくのです。

「『夜は長編小説をじっくりと読め』と言ったじゃないか」と言われそうですが、大切なのは本によってギアチェンジをするということです。古典や長編小説はじっくりと味わい、新書のように新しい知識を吸収するような本は、さっさと読み飛ばしながら進めてしまってかまいません。

 本を読むのが苦手だという人に多いのが、最初のページから最後のページまで全力で読もうとしてしまうパターンです。これでは、肩に力ばかりが入って、一向に読み進めることができません。じっくり読んだ割に、終わりのほうには最初の内容を忘れているということもあるでしょう。

 一字一句、力を入れて読むのではなく、獅子が獲物を捕らえるように、ゆったりと知識をとらえて、反応して消化します。

新しい読書の世界に入り込む方法

 英語の本をそのまま原語で読むのはさすがに大変です。しかしありがたいことに、日本には素晴らしい翻訳家が何人もいます。柴田元幸さんもその一人です。

 柴田さんが翻訳した『ナイフ投げ師』(スティーヴン・ミルハウザー:著/白水社)はとくに素晴らしい作品です。不思議な世界観が巧みな文章で描かれています。『夜の姉妹団』という短編小説集は、夜の力を感じさせてくれます。

 柴田さんの翻訳には、私のみならず、多くのファンがついています。柴田さんの訳ならば、誰が書いたどんな本でも読みたいという層です。柴田さんを追いかけているうちに、アメリカ文学全体に詳しくなってしまったという人も実際に多くいます。