「自分の考え方を観察し、それから選択するんだ。

 実り多く満足のいく人生を送るためのカギは、『批判する人』と『学ぶ人』を見分ける能力をそなえることにあると私は信じている。

 それこそがクエスチョン・シンキングの重要なポイントなんだ。

反射で批判的な解釈をせず
行動の選択権があると自覚しよう

 質問を変え、考え方を変える。考え方を変えて、結果を変える。

 ほんの一瞬、1歩退いて、自分の人生を映した映画の観客になってみてはどうだろう。

 反応で批判的な解釈をするのをやめ、そのときどんな気分なのか、どんな考え方をしているのか、どんな行動を取っているのかを見つめる。

 それに意識を向けることで、事態を受け入れる準備、変化への準備、行動の元となる考え方について『自分に選択権がある』と認識する準備ができる。

 同時に、自分は操り人形で、その糸を他人やコントロール不可能な環境が操っているという感覚からも解放されることができる」

 私はうなずいた。私にも思い至ることがあったからだ。

「技術面での問題に直面した際は、実行した計算や出した結論を照合確認し、見逃しがないことを確認するのにこの自己観察力に似たものを活用しています。

 あなたが言いたいのは、『選択の地図』によって、自分自身をクロスチェックするための――つまりどんな気分や思考が自分の選択を形成しているのかを観察する――自己観察力を養う方法が見つかる。クロスチェックするのは数字だけでなく、自分自身やまわりの人間についてもだ。それによって軌道修正の能力が身につく、ということですね」

書影『<増補改訂版>すべては「前向き質問」でうまくいく』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『<増補改訂版>すべては「前向き質問」でうまくいく』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
マリリー・G.アダムス 著、鈴木義幸 監修、中西真雄美 訳

「まさにそのとおりだよ!相手の名前を間違ってしまったとか、言ってはいけないことを言ってしまったという経験が、きみにもあるだろう。だれにだってあることだ。

 そのミスに気づかせてくれるのが、自己観察力なんだ。それはもって生まれた能力で、だれでももっているものだ。

 そして『選択の地図』を活用すれば、より大きな全体像に集中できる。この能力を養わないと、きみは自動操縦装置を動かして、事態にただ反応するだけになってしまう。

『選択の地図』によって、周囲の出来事や自分の感情に左右されるのではなく、明確な意図をもって意識的に選択する方法を身につけることができるんだ。

 これは、目の前の仕事に意識を向け、自覚をもって、敏感に反応できるリーダーに不可欠な資質といえる」