稲盛は常々、事業には「大義」が必要であると語っている。JALの再建には、大義があると判断したのである。
それは一企業を救うことのみならず、日本経済にとって大きな救いになる。
改革は、この「大義」からスタートした。
「今」会社はどうなっているかと問うと
3カ月も前の数字が出てきた
JALに着任した稲盛は、まず倒産の「病根」はどこにあると見立てたのだろうか。
稲盛 何の知識もないままにJALに着任したので、まず幹部社員に会って話をいろいろ聞きました。私は、もともとがゼロから京セラという会社をつくってきた人間なものですから、そういう人間から見た場合に、JALは霞が関の官僚機構と似たようなピラミッド型の組織で、本社にいる経営幹部、一握りの経営幹部がすべてのことを決めている、そういう印象を第一に持ちました。
経営というのは、いわゆる(経営の)数字をもとに行っていく。
私はかねてから、これが根本だと思っています。
そこで「損益計算書、バランスシート、そういうようなものは、今どうなっていますか、見せてください」と言いました。
見せてもらって唖然としたのです。
なぜなら、それは3カ月ぐらい前のものだったからです。私は「今」どうなっているのかがわからないで、経営ができるわけがないと思っておったものですから。
関連会社も含めて、これだけ大きな組織を、一握りのトップの人たちがすべて見ることができるわけがない、まして経営していくための直近の数字もないというのでは、これはもう倒産するのは当然だなという感じがしました。