伽藍一望の南大門から「東寺」の境内へ

東寺へと戻る道中、九条通と壬生通の交差点に架かる京阪国道口の歩道橋に上がってみてください。五重塔を一望できる隠れビュースポットです。季節に応じて色合いが変わりますが、つい先日までは黄色く染まったイチョウがアクセントになっていました。
東寺の境内へ入るときは、拝観受付に最も近い大宮通側の慶賀門ではなく、九条通に面した正門の南大門から入ることをおすすめします。南大門(重要文化財)、五重塔(国宝)、金堂(国宝)、講堂(重要文化財)と、風格漂う大伽藍が次々に目に飛び込んできて迫力たっぷり。
伽藍群に加えて、東寺でぜひ注目したいのが仏像群です。密教にはつるされた両界曼荼羅がつきものですが、それを人々に分かりやすく見せるために立体化したものが仏像群だからです。まずは、本堂に当たる「金堂」へ。室町時代に焼失したため、1603(慶長8)年に豊臣秀頼が片桐且元に命じて再興させました。
桃山時代を代表する天竺様の構造法による壮麗な建築で、内陣には、中央に薬師如来坐像、両脇に日光菩薩と月光菩薩が安置されています。薬師如来がお座りになる台座を下から支えるのは小さな十二神将たち。薬師如来の前に立つと、光が当たって瞳が潤んでいるように見える瞬間があります。その場を去りがたくなるような、そんな慈悲深い表情をしっかりと心に刻んでください。
東寺を象徴する五重塔は、826(天長3)年、弘法大師空海の創建着手に始まりますが、落雷や火災により4度も焼失、現在の塔は1644(正保元)年に徳川家光の寄進により建てられました。現存する木造塔として日本一の高さを誇り、総高55mもあります。12月8日までの秋季特別公開で、五重塔初層内部の公開や、金堂・講堂の夜間特別拝観が行れていました。ぜひ次の機会にご覧になってください。なお、密教教学の中心となった国宝「観智院」は公開中です。