清らかな水が湧く「清水寺」の舞台へ

仁王門参道の先に現れる「仁王門」が清水寺(東山区)の正門

 年間500万人以上(!)もの参拝客が訪れるという、京都の世界文化遺産を代表する存在が北法相宗の大本山清水寺。12日にやはり30回目を迎えた「今年の漢字」が、森清範貫主の揮毫で「金」と発表されたばかりですよね。

「令和5(2023)年 京都観光総合調査」(京都市産業観光局)によると、外国人観光客の訪問地として、伏見稲荷大社(50.1%)や金閣寺(48.6%)を大きく上回る66.6%と清水寺がトップに君臨していることからも、その人気のほどがうかがえます。

 清水寺の歴史は平安京よりも古く、大和国の僧であった延鎮が夢告により音羽山に清らかな水の湧き出る滝を見つけて草庵を結んだのが起源です。その2年後の780(宝亀11)年、この地に鹿狩りにやってきた坂上田村麻呂(後の征夷大将軍)が修行中の延鎮と出会い、殺生を戒められて改心。千手観音像を安置するお堂を建てたのが始まりです。

 音羽山一帯に広がる境内で一番の見どころは、やはり「清水の舞台」としてあまりにも有名な本堂(国宝)。ケヤキの柱と貫、楔(くさび)のみで釘(くぎ)を使わない懸造(かけづくり)という古来の伝統工法により、崖の上に建てられています。

 なぜ崖にせり出しているのか。御本尊の十一面千手千眼観音が降り立たれるのが崖であるからです。高さ13mの舞台から見渡す渓谷美は思わず息をのむ美しさ。24年の終わりにありがたく拝見いたしましょう。普段見ることができる御前立の奥、内々陣に安置された御本尊は、33年に一度だけ御開帳される秘仏で、次回は2033年にお会いすることができます。

 舞台の下には寺の起源となった「音羽の滝」が今もこんこんと湧き出ています。古くは「金色水」や「延命水」と呼ばれ、清めの水として重んじられてきました。滴る清水をひしゃくで受けていただき、長寿や所願成就を願いましょう。音羽の滝は長蛇の列ができることが少なくないので、並ぶ時間がなければ滝の前の授与所で瓶詰めのご祈祷済み「音羽霊水」(500円)を授かるといいでしょう。

 現在の拝観終了時間は午後6時。日の入り時刻が午後5時前ですから、西の空が茜色に染まりゆく様子や、茜色と藍色とが溶け合うマジックアワーが楽しめるチャンスでもあります。西門を額縁に見立てて夕景を眺めるのもいいですし、本堂の東側に立つ奥の院から舞台と夕景との共演を眺めるのもおすすめです。