その時、船山氏がおっしゃっていたのが「イントロでひきつけてナンボの世界。頭5秒が勝負だと思って、聴いている人に5秒で『何これ?』って思わせないと、ヒット曲にはならないってずっと思っていました。じっくり聴き込んで『この曲いいな』っていうよりも、パッと聴いて『これいいじゃん』って思わせる、その瞬発力をいつも考えて仕事をしてきました」というコメントです。

 まさに「ヒット曲に良いイントロあり!」だったことがわかります。

演歌が下火となった時代に
「天城越え」は発売された

 1980年代のヒット曲の要因としてイントロが重要だったことを踏まえたうえで、1986年発売の石川さゆり「天城越え」の “凄さ”を紹介していきます。

 まずはイントロ秒数です。「天城越え」のイントロ秒数はなんと32秒。とっても長い。

「演歌だから長いのは当たり前では」と思うかもしれません。

 しかし、1970年代に義理人情や、男女の情感を歌うジャンルとして定着した演歌の人気は、1980年代に入ると下火になります。アリスやオフコースに代表される、ニューミュージックと呼ばれたアーティストや、松田聖子、中森明菜といったアイドルが台頭したことが大きな原因です。

「演歌って、ちょっと古いよね」そんな言葉が当たり前になってきた時代に、石川さゆりは抗うことなく、「天城越え」を発売した。

 演歌の心を大事にする気持ちを変わらずに持ち続け、新進気鋭のミュージシャンと、どうやって共有共存していくかを考えた末に辿り着いた32秒イントロだから“凄い”のです。

 この32秒のイントロに投入した“凄い”秘策は、演歌の情念をエレキギターで響かせることでした。

良いイントロを分析すると
「天城越え」の隠れた凄さがわかる!

25年以上、ヒット曲のイントロについて研究してきた私の視点では、良いイントロの条件は3つあると考えます。