「哲学界のロックスター」と称されるマルクス・ガブリエル氏。親日家でもある同氏に、特集『総予測2025』の本稿では、GDPでは測れない日本の豊かさと、道徳と経済をつなぐ倫理資本主義について話を聞いた。(国際ジャーナリスト 大野和基)
日本には信じられないほど優れた
社会的および物理的インフラがある
――米大統領選挙ではドナルド・トランプ氏が勝利し、日本では衆議院議員選挙で与党・自民党が過半数を割りました。こうした現象は、2025年も続くでしょうか。
現政権が負ける現象は世界中で起きています。欧州ではドイツもそうです。それは明らかに、現状に不満や怒りを抱いている人がたくさんいるということ。日本も例外ではありません。この傾向はしばらく変わることはないでしょう。
トランプ氏に嫌悪感を覚える人は確かに多いですが、第1次政権時に実行したことをスコア化すると、歴代の大統領と比べても高い方ですね。単なる嫌悪感で反トランプ的報道をマスメディアがするのは間違っています。
――あなたは親日家で知られますが、最近の日本について何か変化を感じることはありましたか。
そうですね、24年は4月と8月に日本を訪れました。桜の季節の日本は、これまで訪れた世界中のどの場所よりも混雑していて驚きました。
日本は信じられないほど優れた社会的および物理的インフラを持っているにもかかわらず、観光客の多さに苦しんでいますね。欧州でも深刻なオーバーツーリズムが問題になっていますが、日本も同じだなと感じました。
また、8月の来日時は、日本がいかに猛暑や台風に苦しんでいるかが分かりました。世界中で熱波やモンスーンが猛威を振るうようになりましたが、地震も含めて日本人の自然災害に対する考え方には興味深いものがあります。
次ページでは、日本のGDPが4位転落してもなお、豊かな国であることを裏付ける基準について、ガブリエル氏が「倫理的な価値観」を力説する。そのような基準で各国を評価すれば、「日本は断トツ」であり、「中国とは比べものにならない」と強調する理由とは?