「ふるさと納税」が駆け込み寄付で盛り上がっている。真剣に返礼品を選んでいる方々の邪魔をするようで悪いが、「こんなもの誰が買うんだ」とツッコミを入れたくなる“超高額”返礼品をランキング形式で紹介する。“億”超えがズラリと並ぶが、果たしてどのくらい売れているのだろうか。また、高額返礼品の内容を見ると、政府が注力する“ある政策”の課題も見えてきた。(文/観光学者 山口一弥)
“超高額”返礼品ランキングが映す
「観光立国政策の課題」
年の瀬が押し迫り、ふるさと納税のテレビ広告を目にする機会が増えてきた。
ふるさと納税自体に期限は設けられていない。しかし、当年度の所得税の還付が12月31日までの利用分になるという納税者心理をあおって最後のもう一寄付をさせたいのが事業者側の狙いなのだろう。
すっかり定着してきたかに思われるふるさと納税だが、地場と何の関係もない返礼品や採算度外視の豪華返礼品といった自治体間の競争過熱がこれまで問題になってきた。今年はポイント付与を行う仲介サイトを介したふるさと納税を来年10月以降禁止する方針を総務省が打ち出したことに対して、楽天グループがネットを通じて大規模な署名活動を行ったことも話題になった。
一方、こういった返礼品競争の過熱化を受けて、2023年10月に返礼品は寄付額の3割以下の地場産品とするルールに改正された。この結果、ふるさと納税の返礼品は地場の名産品というのが利用者の認識になっている。
都市部では、住民税の減収によって住民サービスに支障が出ることも懸念されている。一部報道によれば横浜市は減収額が全体で約300億円にも上ったという。また、高所得者ほど多額の返礼品を受け取れるといった不公平も課題として挙がっている。
では、そんな高所得者が寄付する高額返礼品には一体どのようなものがあるのか調べてみた。抽出方法は大手ふるさと納税サイトをほとんど網羅した比較サイト「ふるさと納税ガイド」(出所:ふるさと納税ガイド、2024年12月18日時点)から返礼品を高額順にベスト20を作成した。ただし、同一自治体で価格違いの同一産品は除外した。
その結果、上位にランキングされた返礼品には食品は一切なかった。むしろ、モノばかりで、工芸品が目を引く中で、核シェルターが異彩を放っている。
また、観光学者である私の立場からは、寄付の使途目的で観光が多いにもかかわらず、高付加価値の観光や体験がランクインしていなかったことは残念だ。
都市部のオーバーツーリズム対策として高付加価値な地方誘客のための観光コンテンツの開発に国が率先して取り組んでいるが、現場まで浸透していないと感じる。
トラストバンク地域創成ラボの調査では「体験型のお礼の品をもらったことがある」人(25.1%)に対して、もらったきっかけを尋ねたところ「ポータルサイトで偶然見つけて」(41.1%)が一番多く、体験型の返礼品にはまだまだ開発の余地があるのではないだろうか。
寄付金額が1億円を超える高額返礼品がトップ10を占め、第20位でも金額は4660万円だ。庶民感覚では「こんな高額なもの誰が買うんだ」と思ってしまうが、出品者に確認すると実際に寄付の実績がある返礼品もあった。次のページでは、寄付金額の高い順に、返礼品の概要、問い合わせや寄付実績の有無も併せて紹介していく。