「フリーランスは有休もなく社会保障も乏しく、収入を安定させるためには働き続けるしかありません。でも、『これは志が高い作品だから、ギャラは安いけど頑張ってもらって……』などと気軽に口にするプロデューサーの方もいます」
悪気はないと思うが、フリーランスの大変さが想像できていないのではないかと、ついいぶかしんでしまうという。
「じゃあ撮影の間、社員のプロデューサーや役員の方々の給料も減らして制作費に回してほしい、と愚痴のひとつも言いたくなります」
若手が“憧れていた”映画業界を
離れる、納得すぎる理由
(c)2022 映画「LOVE LIFE」製作委員会&COMME DES CINEMAS
映画業界に憧れる人は多い。同時に、さまざまな理由により現場を去る若者が多く、動画配信系の映画も増える中、常に「人材不足」状態だ。
20年に、「NPO法人映画業界で働く女性を守る会(swfi)」が映画業界に勤めていた118名を対象に「なぜやめたか」を尋ねるアンケート調査を実施した(回答者は女性が73.7%、男性が25.4%、その他が0.8%)(https://swfi-jp.org/posts/news/why-quit-survey-results/)。
辞めた理由は、「長時間労働・休みがない」が最も多く(52人)、「将来に不安を感じた」(46人)、次いで「収入への不満」「パワハラ・モラハラ」などとなった(複数回答)。「やめる時やめたくない気持ちはあったか」という質問に対して、40.7%が「はい」と答えた。
多くの現場では、撮影が始まると、朝から夜まで撮影が続き、休日も少ない。深田監督も、子どもが生まれて業界を去った人を何人も見てきたという。「ジェンダーギャップで言うと、女性の方が働きづらい環境であることは間違いありません。ただ、長時間労働が基本の映画製作の現場は、女性だけでなく、そもそも人間にとって優しくない環境です」
時に人格を否定するような言葉も浴びせられ、殴る蹴るのパワハラを受けるなど、若き日の深田監督は現場で壮絶な経験をしてきた。長時間労働に低賃金と、「地獄絵図」のような現場が著書にもつづられている。