リハビリは、病気の対処方法を身につけ、自分らしく安定した社会生活を送るためのものだ。斎藤さんは、「発症後にできなくなった能力を取り戻したり、補ったりするだけではありません。病気の告知を受けて絶望している患者さんに、生きようという意欲を持ってもらう。病気と折り合いをつけ、生きることの意味を回復するよう支援するのが、リハビリで最も重要です」と説明する。
そもそも完治は可能?
発症前の状態まで回復する割合
では、統合失調症を発症したらどうなるのか。
不眠になったり音に敏感になったりするなど発症の前触れとなる「前駆期(前兆期)」を経て、不安や恐怖が強くなり、幻覚や妄想(陽性症状)が現れる「急性期」に入る。陽性症状がおさまり、感情が鈍くなったり意欲が低下したりする陰性症状が出る「休息期」に入り、徐々に日常生活を取り戻していく「回復期」が訪れる――といった経過をたどるとされている。
ただ、何年もかけて発症する人も、何の予兆もなく急性期に至る人もいる。回復期を迎えず、社会生活が困難になる人もいる。症状も多様だ。「そもそも統合失調症は、一つの病気というよりも、同じような症状や経過をたどる病気をひとくくりにした“症候群(症状の集合)”と考えられています。患者さん一人ひとり、症状も経過も異なります」と斎藤さんは言う。
そのため、予後(病気の見通し)についても大まかに、3分の1が最初に統合失調症の症状が起きた後、回復して薬の投与もなく過ごせるグループ、3分の1が一度回復しても再発を繰り返し、次第に重症化していくグループ、3分の1が最初の発症以降、回復せずに慢性的に悪化するグループに分かれるのだという。
「僕が大学を出た40年以上前の教科書にも同じこと書かれていて、今もその内容は変わりません。発症前の状態にまで回復するのは1~2割程度です」