最初に発症してから受診するまでの時間が短く、適切な治療を受けることで、再発や予後の改善を期待できることが、近年の研究で明らかになった。統合失調症は一度再発すると、その後も再発を繰り返し症状が悪化していく。だからこそ、再発を予防するために服薬の継続が不可欠だ。
「眠れなくなった」「落ち着かなくなった」「不安を感じたりするようになった」などは再発兆候のサインだ。この時期に早めに受診して、症状に対応することで、状態悪化を防げるという。
ただ、一部の患者さんは、回復すると「症状が落ち着いたから、もうこのまま薬を飲まないでいいだろう」と自己判断で断薬する。初めて症状が出た後に服薬を中断すると、1年以内に7~8割の患者さんが再発し、さらに入院のリスクが高まるとの報告がある。
「薬をやめて1カ月後に警察沙汰になって、どん底の状態で病院に運ばれるか、少し調子が悪いと感じた時点で病院を受診するかで、大きく変わってきます。具合が悪くなったら、『あの病院に行って助けてもらおう』と思ってもらえるよう、医師と患者さんが信頼関係を築くことが重要です」(齋藤さん)
「病気」を自覚するのは困難
再発を防ぐために大切なこと
統合失調症の患者さんは、自分が病気であるという実感(病識)がないために、精神科の受診に積極的ではなかったり、服薬をやめたりすると考えられている。
一方で、「警察が私の命を狙っている」「誰かが私の部屋を24時間のぞいている」といった妄想や幻覚は、患者さんにとっては、実際に「存在」しているもので、病的だと自覚するのは難しい。
患者さんの立場にたって考えてみると、どうだろうか。誰かに命を狙われることは「事実」だ。常に何かにおびえ、不安な日々を送っているのに、自分が信じていることを否定される――。