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それだけいろいろな意味で、「統合失調症は深刻な病気」なのだと齋藤さんは言う。「ただ現在は、世帯の人数が少なくなり、家庭内で抱え込むのが難しくなったことなどで、早期に精神科を受診し、診断後は外来で治療する人が多くなりました」
2002年、日本精神神経学会は1937年から使われてきた「精神分裂病」という病名を「統合失調症」に変えた。「精神が分裂する病気」では誤解や偏見を招き、本人や家族にも告知しにくいためだ。この呼称変更も受診のハードルを下げる理由の一つとなった。
「我が邦(くに)十何万の精神病者は実にこの病を受けたるの不幸のほかに、この邦に生まれたるの不幸を重ぬるものというべし」
統合失調症を含む精神障害のある人を自宅に監禁する「私宅監置」の実態を調査し、1918年に報告書を発表した東大教授で松沢病院院長だった呉(くれ)秀三(しゅうぞう)氏(1865~1932年)は、日本における精神障害者についてこう嘆いた。
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かつて日本では、1900年に施行された「精神病者監護法」により、古くから行われていた私宅監置が法で認められるものになった。これが逆に、「手続きさえ踏めば許される」と捉えられ、1950年に禁止されるまで続く。
その後、「精神衛生法」によって患者本人の同意を必要としない「非自発的入院」の制度ができると、精神科病床の増加とあいまって、「法的手続きが整っていれば長期の入院が許される」という結果をもたらした。そのことが今日まで続いて国際的批判の的になっているのだと齋藤さんは語る。
研究者が「若干の手詰まり感」を
感じているのはなぜか
改めて、統合失調症とはどのような病気なのだろうか。
「誰かが命令してくる声が聞こえる」といった幻覚や、「自分の命が狙われている」といった妄想、思考障害などの「陽性症状」、意欲や自発性の低下、喜怒哀楽が乏しくなるなどの「陰性症状」、集中力や記憶力、問題を解決する力などが落ちる「認知機能障害」などがみられる精神障害だ。