パソコンと女性写真はイメージです Photo:PIXTA

大切な人を亡くした喪失感や悲しみと向き合い、再び歩き出すためにはどうすればいいのか。悲しみを癒やす=グリーフケアを実践する著者は、これまで失意のどん底にいる人々と向き合ってきた。「夫を失い、人生の設計図が突然白紙になった」と絶望する50代女性が、明るく前向きになれた理由とは――。本稿は、坂口幸弘・赤田ちづる著『もう会えない人を思う夜に 大切な人と死別したあなたに伝えたいグリーフケア28のこと』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を抜粋・編集したものです。

人生の設計図がある日突然
白紙になってしまった

Hint 自分の人生に目を向けて
小さな目標に向かって歩き始める

 今日一日をなんとかやり過ごせるようになってきても、これから先、どう生きていけばよいのかと不安を覚えることがあります。

 亡き人のいない人生を想像するのは難しく、将来のことなんてまったく考えられないという絶望的な気持ちになる人も多いです。

「人生の設計図が、ある日突然白紙になったようなものです」と話してくれたのは、心疾患で突然に夫を亡くした50代の女性でした。

「これまでも、そしてこれからも、私の人生の設計図は夫の名前ばかりでした。子どもを授かることができなかった分、私たち夫婦はとても仲良しでお互いを必要としていました」

 このように悲しい思いを口にされていました。

 この先の人生を生きていくために、何かしなければと思いつつも、何をすればいいのか、何が必要なのか。それもわからず、途方に暮れてしまうこともあります。

 自分の時間をどのように過ごしていいかさえ、わからなくなります。

 この女性も、そうでした。

「夫以外に何が必要かと聞かれても……。夫がいて、さらに必要なものは思いつきますが、夫がいないのに必要なものを探すのはとても難しいです。でもそうすることが大切だということもわかっています。もう若くはありませんが、残された人生が短いわけではないですからね……」

 突然に夫が亡くなって、ただただ悲しいだけの嵐のような時間が過ぎさったとしても、途方もない不安に襲われたりします。でも、遺された人は自分の人生を歩んでいかないといけません。

 この女性もそのことを頭ではわかっているようです。でも心がついていかない様です。

いつか夫と一緒に行きたかった
スペインへ行く目標ができた

 これからの人生を生きていくためには、何かしらの目標や希望をもつことが大切です。そうは言っても、深い悲しみの中で、目標や希望を見つけることは簡単にできることではありません。

 そのようなときは、まずは身近なところで、すぐにでもできるような小さな目標を立ててみてはいかがでしょうか。

 興味はあったものの、きっかけがなくて、なかなかできずにいた新しいことに挑戦したり、長らく中断していたことを再開したりするのもいいと思います。