もしかしたら以前のあなたではなく、今のあなただからできることがあるかもしれません。
そうしただれかのために助けになることや、人の支えになることをやってみるのもいいことです。
ただ実際には、ほかの人や社会のために自分にできることをしたいと考えていても、何をすればいいのかわからないという人も多いように思われます。
亡き夫が入院していた病院で
ボランティアをする喜びを得た
信頼できる人とのつながりや、新しい出会いを大事にするなかで、自分に何ができるか、まわりの人が自分に何を求めているのかを、見つけられることがあります。
自分の経験や能力を活かして、人のためにできることを考えてみてはいかがでしょうか。つらい体験をし、今を懸命に生きているあなただからこそ、何かできることがあるかもしれません。
先ほどの70代の女性にもそうお伝えしたところ、そのときは「私にだれかのために役立つ経験や能力なんてないんです」とお答えになりました。
それから数カ月がたった頃、彼女はある報告をしに来てくれました。
「夫の入院していた病院にお礼に行ったんです。訪問したとき、ちょうど病院で家族会をしていました。看護師さんに誘われて行ってみると、私のように家族をがんで亡くした方や、現在闘病中の人のご家族が集まってお話をしていて。
並べられていた椅子に座ると、とても良い香りのするお茶を運んできてくれました。少しほっとして、久しぶりに美味しいなあと思ってお茶を飲めたのです。
帰り際に聞いてみると、お茶を運んでくれた女性も、家族をがんで亡くされた方でした。とっさに『私にもお手伝いすることはできますか』と口にしていました。そこから病院でボランティアをするようになったんです」
この女性はその後、家族会がある日は病院に足を運び、お花を飾ったり、お茶を入れたりするようになったそうです。そのことが彼女の小さな楽しみになっていきました。
「つらそうなご遺族や、ご家族が闘病中で大変そうな方が、お茶を手にしたときにのぞかせる少しほっとしたようなお顔を見ると、私にもできることがあるのかもしれないと思えるんです」
と話されていました。