目の前の目標や課題に取り組むなかで、やりがいを感じ、失われた人生への希望を再び取り戻せることがあります。

 希望は生きることを肯定することであり、これから先の人生を生きていく力を与えてくれます。困難な目標や希望であったとしても、それらをもつこと、もとうとすることが大事なのだと思います。

 大切な人の死はつらい出来事です。

 一方で、その後の日々をなんとか生きていくなかで見つけた新たな生き方や出会った人々の存在が、のちに今後の人生を歩む大きな糧になることがあります。

 失っていないものや、新たに得たものを意識することは、目標や希望をもって生きるためのヒントを与えてくれるかもしれません。

 どのような目標や希望でもいいのです。勇気をもって自分の人生の歩みを進めるための原動力にきっとなることでしょう。

POINT 残りの人生に思いをはせ、自分の人生をゆっくり歩こう

妹や友人に優しくされると
自分の無力さを感じるばかり

Hint あなたを必要としている人がいる
だれかのためにできることを考えてみる

 大切な人を失ったことで、この先をどう生きていいのかわからず途方に暮れ、自分の無力を思い知らされることがあります。亡き人がいない今、自分だけでは何もできないと思ってしまう人もいます。

 夫を胃がんで亡くしてまもない70代の女性は、不安な思いを打ち明けてくれました。

「今まで夫に頼りっぱなしの人生だったので、この先、どう生きていったらいいのかわからないんです……。もう私にできることは何もないんです」

 無力感に押しつぶされそうな様子でした。ご主人を亡くしてからは、妹や友人が親身になって話を聴くなど支えてくれているそうです。

 ありがたいと思う一方で、「その優しさを感じると、ますます自分がひとりでは何もできないことを思い知らされるんです」とつらそうに話されていました。

 人は一方的に与えられ、支えられるばかりでは、無力感ばかりがつのることがあります。

 死別の混乱や悲しみを周囲の人に助けられ、支えられていると感じている人の中には、いつかは自分もだれかの力になりたいと考える人もいるでしょう。

 つらい経験をしたがゆえに、以前よりも、悲しみや苦しみを抱えた人に共感を覚えるようになる人もいます。