
働く者一人ひとりの「キャリア」がいっそう重視される時代になった。個人が職業経験で培うスキルや知識の積み重ねを「キャリア」と呼ぶが、それは、一つの職種や職場で完結するものとは限らない。「長さ」に加え、キャリアの「広さ」も、エンプロイアビリティ(雇用される能力)を左右するのだ。書籍『個人と組織の未来を創るパラレルキャリア ~「弱い紐帯の強み」に着目して~』(*)の著者であり、40代からのキャリア戦略研究所 代表の中井弘晃さんは“パラレルキャリア”こそが、個人と組織を成長させると説く。今回は、パラレルキャリアを改めてタイプ分けし、副業との違いを考えたうえで、個人と組織にもたらす効果を考える。(ダイヤモンド社 人材開発編集部)
* 中井弘晃著『個人と組織の未来を創るパラレルキャリア~「弱い紐帯の強み」に着目して~』(2022年10月/公益財団法人 日本生産性本部 生産性労働情報センター刊)
*連載第1回 価値ある“パラレルキャリア”とは?広義の5タイプから考える副業との違い
*連載第2回 “パラレルキャリア”の効果と効果最大化のために個人と組織に必要な姿勢
*連載第3回 仕事のキャリアをよい方向に導く“緩やかなつながり(弱い紐帯)”を考える
*連載第4回 “偶然の出来事”をキャリアに活かす!――そのために必要なことは何か?
*連載第5回 不本意な異動や出向……職場環境の急な変化で、キャリアを豊かにする方法
“パラレルキャリア”を5つのタイプに分類していく
“パラレルキャリア”は、「本業と並行して、複数の仕事(副業)をしたり、ボランティアや趣味のサークルなど幅広い社外での活動」と一般的に定義されます。
その効果については、さまざまな媒体で取り上げられ、私自身も連載第2回で詳述しています。ただ、幅広く定義された“パラレルキャリア”に、一律の効果があるわけではなく “パラレルキャリア”のタイプや取り組み姿勢によって、生じる効果は異なる、と私は思っています。
個人にとっては、社外での自主的な活動を行うだけでも、視点の広がり、ネットワークの拡大、メンタルバランスの安定など、さまざまな効果が期待できます。しかし、パラレルキャリアの効果を個人レベルにとどめてしまうのはもったいない話であり、その効果を、組織や社会に還元してこそ、“付加価値のあるパラレルキャリア”と言えるのではないかと、私は思います。
今回は、どのような“パラレルキャリア”に、どのような姿勢で取り組めば、個人と組織双方に効果がある“付加価値のあるパラレルキャリア”となるかを、さまざまなケースを交えながら、改めて考えていきます。
連載第1回で、私は“パラレルキャリア”を5つのタイプに分類しましたが、今回、一部表現を見直し、再定義したものが、以下となります。
(1)本業改善型 (2)将来布石型 (3)社会課題解決型 (4)プライベート充実型 (5)収入補填型(副業)
これらを“広義のパラレルキャリア“と呼びます。
(1)~(5)の中で、個人と組織双方にさまざまな効果をもたらすタイプの“パラレルキャリア”は、(1)本業改善型 (2)将来布石型 (3)社会課題解決型の3つだと言えます。
“広義のパラレルキャリア”と区別して、(1)(2)(3)のタイプを“狭義のパラレルキャリア”と呼び、これらが“付加価値のあるパラレルキャリア”と私は考えています。
(1)本業改善型 (2)将来布石型 (3)社会課題解決型に共通する特徴は、「学びの姿勢」「未来志向」「自発性」「対人性」であり、加えて、単に「自身の成長」だけを追うのではなく、社外での学びを「本業に還元する意識」です。