1回目の退職:次を決めずに退職をしたときの不安

 私自身は、会社に行かなくていい状況になったのは人生で2回あります。1回目は新卒で入った会社を10カ月で次も決めずに辞めたときでした。

 退職後1カ月目は解放感でいっぱいだったのですが、2カ月目あたりからは「まわりの友人は皆仕事をバリバリやっているのに、自分だけが朝起きても行く場所がなく、社会から取り残されたような気持ち」になり、非常に苦しかったのを覚えています。さらにお金もどんどん減っていき、不安に拍車がかかりました。

・行く場所が無い孤独感
・世の中に自分が取り残された感
・金銭的不安

 当時は勢いで会社を辞めてしまいましたが、辞めるまで、まさか自分がこんな気持ちになるなんて想像もしていませんでした。ですからご質問のとおり、きっと何の見通しや人生プランもないまま会社を辞めた場合は、この頃の私と同じようにかなり不安になると思います。

2回目の退職:不安のない退職

 一方、きちんとプランニングを行い、資産も構築し、十分働いた後の退職(4年前)では、1回目とはまた違った感情を抱きました。

・企業で働かないことがダメだと思わなくなった
・自身の停滞に寛容になれた

 といった気持ちは、1回目の退職のときにはなかったものです。1回目の退職では、企業に所属していないために世の中から取り残された感じを受けていましたが、今なら、それはかなり視野が狭かったからだと言えます。

 私も40代となり、働き方にもさまざまな形があることを知りました。企業に所属していることがすべてではなくなったため、「このままでは自分はダメな存在になってしまう」と自分自身を追い込むような思考をすることもなくなりました。

 思い起こせば、我々は就職してからどころか小学校に入学して以来、必ず「決められた時間に決められた場所へ行って、勉強もしくは仕事をする」という生活を送ってきています。ですから、「日中は必ずどこかで頑張っていなければならない」という感覚が染みついているのでしょう。ですから定年退職後に向けては、まずその考えを変えなければいけません。

 朝起きて会社に行かなくてもいい幸せをかみしめ、誰かに何かをさせられることからの解放を味わう。人生のすべての時間が自分のための時間であるという感覚。何かをしていないと不安なのであれば、会社から給与をもらうのではなく、自分の力でどこまでできるかを試せるチャンスと考える。ワクワクこそすれ、自分がダメになったなどと卑下する必要はないのです。