
フジ・メディア・ホールディングス(HD)のテレビ事業への依存は同業他社に比べても低かったはずだが、フジテレビのスポンサー離れで未曽有の苦境に陥っている。ビジネスへの影響はどこまで波及するのか。特集『フジテレビ崩壊 沈むメディア帝国』の#13では、フジ・メディア・HDの財務を徹底分析した。本業のメディア事業だけではなく、「稼ぎ頭」である不動産事業の弱みも浮かび上がってきた。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
本業だけでなく不動産事業も脆弱
フジの「脱テレビ」は遠い
元タレントの中居正広氏の女性トラブルに端を発した、フジテレビからのCMスポンサーの一斉撤退。フジテレビではACジャパンによる公共広告と自社番組広告しか流れない異常事態がいまだに続いている。
フジ・メディア・ホールディングス(HD)は、CM差し止めの影響を受け、2025年3月期にフジテレビおよびメディア・コンテンツ事業セグメントが初の営業赤字に転落する見通しを明らかにしている。フジ・メディア・HDの当期純利益も前期比73.6%減の98億円に落ち込む。
スポンサー企業がCM出稿に伴い支払う広告費は、放送局の主な売上高であり、番組制作費の源泉ともなる生命線だ。だが、本来フジテレビに関してはその生命線は他社と比べてそこまで太くなかった。24年3月期のフジテレビの売上高に占める広告売上高の比率は61%で、日本テレビ放送網(日テレ)の76%、テレビ朝日の74%と比べても高くない。
フジ・メディア・HDは23年5月に策定した中期経営計画で「『人々が心を潤し、生活を豊かにするすべてのもの』を『コンテンツ』と捉え一人ひとりの生活スタイルに適ったメディア・販路・提供手段で届けることで、25年度に連結営業利益400億円を目指す」としている。微妙に広めのコンテンツの定義をわざわざ打ち出しているのは、フジ・メディア・HDは放送局を核としたグループだが、メディアセグメントにおいてすら収益構造で見ると、「放送会社」ではないからだ。
従って、フジテレビのスポンサー離れの影響は、収益構造上はそこまで大きくはないはずだが、今回の不祥事はフジ・メディア・HDグループ全体を揺るがす事態となっている。
なぜなのか。今回の問題の影響がそれだけ深刻であるからでもあるが、そもそもフジ・メディア・HDのこれまで推し進めてきた多角化が、収益面ではフジ・メディア・HDを真に支えてきたとは言い難い状態だからだ。
そもそもフジ・メディア・HDの財務や収益構造は、同業の大手民放キー局4社と比べるとどんな状況にあるのか。そして、長引くCM中止はどのような影響をもたらす可能性があるのか。次ページからフジ・メディア・HDの財務諸表を分析し、同社が抱えるビジネス上の「弱み」を浮き彫りにする。