そのホンハイが日産との連携でEV事業の拡大を狙っている。というのも、現在、ホンハイのEV事業の最高戦略責任者(CSO)を務めるのが、元日産ナンバー3の関潤氏なのだ。シャープが24年にEV事業参入を明らかにしたが、その仕掛け人が関氏でもある。
関氏は元々、日産のプロパーだが、防衛大学校理工学専攻機械工学専門課程出身で「ジェット戦闘機のパイロット志望」から転じて86年に日産に入社した異色派だ。生産技術畑から各部門を経験し、内田社長が就任直前まで担当していた中国事業統括で実績を上げるなど日産での地歩を固めて“社長候補”と見られていた。だが、内田社長就任時に副COO(最高執行責任者)に甘んじたことで、当時の日本電産(現ニデック)・永守重信社長からヘッドハンティングされて日本電産入り、その後、23年2月にホンハイのEV責任者に就任している。
関氏は日産社内でもいまだに高い人望があり、社内や有力OBからも次の“日産トップ”として復活してほしいとの声が多いとも聞く。少なくとも、ホンハイと日産をつなぐキーマンであることは間違いない。
今後、ホンハイの出方が一層注目されることになるが、そこには日産の親会社のルノーの動きも関連する。ルノーと日産は23年11月に資本関係を見直しているが、信託会社預け分も含めて、ルノーは日産株をまだ約36%保有しており、この比率を徐々に減らす方針だ。もしホンハイが日産株を高値で買い取ってくれるのであれば、ルノーにとっては好ましい展開だ。
すでに水面化で関氏が、日産株の取得などを巡ってルノーに接触しているという報道もある。また、ホンハイの会長は公の場でルノーとの接触を認め、「日産を買収するのではなく、連携を進めていきたい」との発言をしている。日産・内田社長は会見で、ホンハイのアプローチに関しては、「実際のマネジメントレベルの話はないが、日産の事業価値、成長につながれば議論したい」とコメントしている。
ホンハイがルノーから36%から15%出資へ差し引いた分を高値で買い取れば、20%強の筆頭株主として社長人事への影響力も持つ。日産社内をよく知る“関社長”への交代もあり得るのだ。
日産も次の手を組む相手としてホンハイならば悪くはないはずだ。アジアの強力なEV供給網を形成できる可能性があるほか、高い生産技術力を誇るホンハイとの連携は、EVだけでなくホンダとの提携でも焦点となっていたSDV(ソフトウエア・デファインド・ビークル)でも大きなプラスとなるはずだ。
一方で、ホンダは次の手をどうするのか。