日産を狙うホンハイ
鍵はルノーの動向

 まず、早急にてこ入れが必要なのが日産だ。ターンアラウンドの断行からホンダとの協業で成長戦略を描くシナリオは崩れた。内田社長、三部社長とも「経営統合は解約したが、戦略的パートナーシップは継続していく」としているが、経営統合が破談となったのにどこまで戦略的パートナーシップでの協業を進めることができるかは不透明だ。

 筆者は、13日の夜にテレビ朝日系の「報道ステーション」でホンダ・日産統合破談の解説を求められてZoom出演した。それに当たり、前日の12日には現役日産社員と常に情報交換している複数の有力OBを取材する機会を得た。

 日産は、ホンダの子会社化提案を「日産の強みを出すのは難しい」という判断で断ったが、有力OBが現役社員と接触して聞いた意見は「日産ブランドが生き残るなら子会社化でも経営統合を進めるべき」というものだった。2月6日に内田社長が三部社長を訪ね、経営統合交渉の打ち切りを伝えた段階でも「日産社員の多くはこの動きを知らされておらず、そもそも内田社長をはじめとする取締役会とエグゼクティブ・コミッティに対する社内の不信感は最高潮に達している」とも述べていた。

 加えて「内田社長と星野朝子副社長の“外国人組”(仏ルノー関連の外国人役員とは別に、日商岩井から転職した内田氏と社会調査研究所〈現・インテージ〉出身の星野氏のことを指す)が、日産のビジネスを根底から崩した。2人には辞めてもらわなければという社内の声が強まっている」という声も聞かれた。内田社長は社内ではこわもてを通し、星野副社長はカルロス・ゴーン元会長がマーケティングのプロとして招へいし、星野リゾート社長の夫人という話題もあって営業を統括してきたが、結局日産の販売力低迷を打開できないまま今日に至っている不満が噴き上がっているようだ。

 こうして社内でも日産経営陣の責任を問う動きが強まる中で、窮地の日産が再生するには、経営陣の刷新とホンダに代わる別のパートナーを視野に入れることが求められる。

 日産にとってその有力候補が台湾・鴻海精密工業(ホンハイ)だ。ホンハイは、EMS(電子機器受託生産)世界最大手であり、16年にはシャープを買収し、19年にはEV事業への参入を表明している。