再認記憶は、過去に見たことがあるか否かを判断できるかどうかの記憶です。人の顔を見て「確かどこかで見たことがあるな」というものです。
人間は再生記憶より再認記憶のほうが得意とされています。「顔は見たことはあるけれど、名前が思い出せない」というのは、再認記憶としては思い出せているものの、再生記憶がうまくいかないときに起きるのです。
人の名前を思い出す力を強くするためには、人の顔と名前を覚える際に必要とされる3つの力を鍛えることが大事になります。3つの力とは、「カオ認知力」「ナマエ連想力」「イメージ結合力」です。
詳細は省きますが、「カオ認知力」とは、その人の顔を見たことがあるか否かとか、特徴的な顔のパーツ、誰と似ているかなどを瞬時に判断する力です。たくさんの顔を見て、短い時間で特徴を捉える練習をすれば簡単に鍛えられます。
「ナマエ連想力」は、相手の名前を見て何か別のものを連想する力です。自己紹介で「青木さん」という名字だったら、知り合いの青木さんや、俳優の青木崇高さん、プロゴルファーの青木功さんなどの有名人を思い浮かべるのが、この力を鍛えるのに有効です。
「イメージ統合力」は、「カオ認知力」と「ナマエ連想力」でつくったイメージをつなぎ合わせる力です。「顔は見覚えがあるけれど、名前も知っているはずなのに出てこない」というのは、イメージの結合がうまくいっていないときに起きる現象です。
認知科学や脳科学、心理学などで用いられる「処理水準効果」という専門用語があります。形態処理や音韻処理よりも、意味処理をしたほうが記憶に残りやすいというものです。
「Apple=りんご」を覚えるときに、形態処理は単純にそのまま記憶します。音韻処理では、声に出したりして音で覚えます。意味処理では、「Appleは果物で、りんごジュースはおいしいとか、iPhoneの会社はAppleでりんごのマークが使われているな」というように意味を考えながら記憶します。